WOWWOWで、黒澤明監督の”天国と地獄”を見た。
1963年公開の作品で、
ストーリーは、誘拐犯人と警察の攻防を描いた、
土曜ワイド劇場的な内容である。
上映時間は、2時間23分に及び、
警察の捜査や事象の細部まで、丁寧に描写されているのが印象的だ。
この作品、横浜が舞台で、画面に当時の横浜が出てくる。
まず、子供を誘拐された(実は運転手の子供)重役の家が、
浅間台にあるという設定。
そこを見上げる犯人の家は浅間町にあった。
そのため、その家の大きな窓から、横浜駅~西横浜駅あたり、
さらに港が見渡せる。
そして、終盤、
犯人がヘロインを入手するために入った店は、
今はなき若葉町の”根岸家”。
”根岸家”というのは、
メリーさんを描いた映画 ”ヨコハマメリー”にも登場した、
24時間営業の大飲食店だ。
米兵なんかも含め、酔客や店の女など、
いろいろな客でにぎわっていたそうだ。
映画の画面でも、尋常じゃない大混雑、盛り上がり振りがわかる。
1970年代には閉店して、そのあと火事になって、
今はこのとおり、駐車場になっている。
一度くらい、行ってみたかったなあ。
ヘロインを入手した犯人が向かうのが黄金町。
”ちょんの間”で有名になる前、もっと恐ろしかったころの黄金町だ。
当時はヘロインなど、麻薬の中毒患者で溢れかえっていたという。
作品では、路上に力なく座り込んだ男女や、
薬を求めてのたうちまわる女の姿が描かれている。
まさに地獄絵図といった感じ。
当然、この場面は現地ロケなどできないが、実際にこうだったのだろう。
聞いていたとはいえ、ショッキングな映像だった。
今は静かな末吉橋だが、
その頃は、橋上にヘロインを待つ者が行列を作ったそうだ。
伊勢佐木町でうろうろする犯人と、刑事のシーンもあるが、
そのあたりはどうもセット収録らしい。
この作品では、あんまり、横浜いいイメージじゃないな。
ほかにも、在来線の特急こだまや、江の電の登場もあって、
いろいろ楽しめた。
もちろん、本筋も面白い。