パーティーが始まる前、橋下徹の亡くなった父親をよく知る人物に会い長時間インタビューした。
この人物は、橋下徹の父親・之峯(ユキミネ)の遠戚にあたる。彼は之峯と同じ八尾の出身である。八尾は今東光原作、勝新太郎が八尾の朝吉を演じて大ヒットした映画「悪名」の舞台として知られた場所である。
「わし、子どものころ、やんちゃしとってな、少年院に入ってたんや。それで出てきたら、アレ(橋下徹)の親とワシの知ってる人が一緒になっとった。ワシが18歳くらいのときやから、今からちょうど50年前や。その時、あのオヤジは水道屋やってたんや」
―― 之峯は「ピキ」とか、「ピッキャン」とか呼ばれていたと聞きました。そう呼ばれたいわれはご存知ですか。
「ああ、それならワシ、聞いたことあるわ。いつだったか、
『アニキ、なんでピッキャンなんてしょうもない名前、言うてるの?』って聞いたら、『キューピーに似てるから』って言うてた。あの、人形あるやん?キューピー人形。どっかの週刊誌に『役者みたいな顔してた』なんて書いてたけど、あんなんウソや。あんなん役者の顔やないわ。背も低いし、ドラム缶みたいにずんぐりむっくりやし」
―― ケンカも強かった?
「強かった。相撲も強かった。何でそんなに強いのって聞いたら、『奈良の少年刑務所で相撲しとった』って言ってた。いまはどうかしらんけど、奈良の少年刑務所にはその頃、相撲道場があったらしい。ピッキャンは八尾の安中の生まれやけど、子ども時代から悪くて有名やったらしいねん」
橋下之峯の出身地八尾市安中地区には被差別部落がある。
―― ヤクザ組織には入ってたんですか。
「柏原に土井組系の津田組というのがあった。そこの若い衆をやっとった」
柏原は之峯の出身地の八尾に隣接した同じ旧中河内郡内の町である。之峯が若い衆だった津田組の上部団体の土井組には、97年に山口組内部の抗争事件で射殺された山口組若頭の宅見勝も若い頃に出入りしていた。
―― ピッキャンは博打はしましたか。
「ワシ、一回、河内の志紀にあった博打場の手配師から、来てくれって呼ばれたことがあるんや。
そのとき、ピッキャンが博打場でケンカしてたの覚えてる。ケンカの相手は無期懲役で仮釈放されよった男やったけどな。その男が女に手を出そうとしたとき、ピッキャンが血相変えて相手をどつき倒したんや。橋下がテレビで相手をメチャクチャ言うて負かしてしまうのは、ピッキャンの血や」
―― ピッキャンは博打は強かったんですか?
「あんまり強うない。頭かしこくくないから」
―― 主にどんな博打だったんですか。
「賽本引きとか、手本引きとか、賽の場合はツキやけど、手本引きは相手の手をある程度読まなあかんでしょ。あんまり賢くなかったピッキャンは、それほど勝てんかったんとちゃうかなあ」
―― 入れ墨は入れてましたか。
「若い頃はちょろちょろっとミッキーマウスの漫画のようなものしとった。でも、自殺する10日前に安中の銭湯で会ったときはすごい入れ墨やった。
そんときワシ『あんなんその体?』って聞いたんや。そしたら、おっさんが『ちゃうがな。これはお前、彫師にカネ貸しとって、取りに行ったらカネない言うから、これ(入れ墨)で返しよってん』って言うんや。全身に入っとったな」
―― どんな入れ墨でしたか。
「たぶん、龍やった。背中にバーンと、〝ジンベエ彫り〟言うてね。背中から膝あたりまで入れとったわ。あれ入れようと思ったら、10万や20万で入れられへん。何百万もかかる入墨なんちゃうか」
―― 自殺する5時間前にもあったそうですね。
「会った、電話がかかってきたんや。『来い』言うて。はっきり言って、頭半分狂うとった。もう。脳みそ入れ替えなあかんような、そんな感じやった。ワシ、昔やんちゃしとったし、いろんなヤクザの知り合いおるから、シャブやっとる人間は見たらすぐにわかるねん。もう、目は飛んでるしな。あくる日、知り合いから電話がかかってきて、『ピッキャンがガス管くわえて死んだ』って言うから。
誰でも『えー!?』ってなりますやん」
―― ところで、ピッキャンには博焏(ヒロトシ)という弟がいますね。
「ああ、おる。丸万土木という土建屋をやってた。その博焏と愛人の間に生まれた子が、金属バット殺人事件をやった。その子が加古川刑務所から出たとき、博焏が面倒見てくれって言うたけど、ワシ、面倒見きれんと断った」
橋下徹の父親が自殺しているばかりか、従兄弟が金属バットで人を殺しているという。橋下徹の周りには修羅が渦巻いている。私は死んだ之峯の縁戚が淡々と語る話を聞きながら、これはまごうことなく、中上健児の世界だな、と思った。被差別部落出身という境遇や、自殺、殺人という物語の重要な要素が共通しているだけではない。中上の小説に決まって登場する「秋幸」という主人公の名前が、ピッキャンこと「之峯」という名前とがどこか響き渡っているような感じがしたからである。
(さの・しんいち) 第一回のみで連載中止
実父:橋下之峯
暴力団山口組系土井組系津田組の三羽ガラス 表の顔は、土建屋・水道屋 少年刑務所出身
全身に入れ墨 シャブ常習者 ガス菅を咥えて変死
叔父:橋下博焏
暴力団山口組系土井組系津田組組員 表の顔は、土建屋・水道屋
経営していた会社の倒産後は、公共事業入札の「業務屋」「談合屋」
同和団体や部落解放同盟に所属 実は、山口組の貯金箱だった同和建設協会
表は「同和」、裏は「暴力団」 借金踏み倒しの前科で、今なお恨まれている
マル暴系建設業者によるパーティ券の大量購入で有名
橋下徹氏は「政治資金パーティを含め、企業・団体献金を受けない」と言っていたにもかかわらず、
この大阪府公共事業を請け負う企業役員である叔父から献金を受けていたことが府議会で発覚
いとこ
1999年11月に東大阪で38歳の雑貨卸商を金属バットで殴り殺した
加古川刑務所出身 刑務所出獄後、大阪府議の秘書になっている
出典:「 橋下 『 大阪改革 』 の正体 」 一ノ宮美成著、講談社
「同和と暴力団 公金をしゃぶり尽くした日本の闇人脈 」一ノ宮美成著、宝島社
「同和と橋下徹」森功、講談社G2