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けんけんパー

雑談をする場所です。



12月10日。札幌はめちゃ大雪だった。



この日の予定は、忘年会という言葉を正当化して行われる飲み会だった。とくに忘年感はなし。そもそも忘年会ってよくわかっていない。




唯一しみじみと感じるのは、もう忘年会という言葉を使われる時期なのだなあ。というぐらい。




とりあえず、一度も飲んだことがないメンバーだったので、まあ面白そうかなと思い、まるでクジ引きをするような気分で参加した。




その日の集合場所は、今住んでいるところよりも、地元からの方が近かった。なので、せっかくだから地元に少し帰ってきて、地元からバスで集合場所に行くことにした。


〜〜


地元を少しばかり堪能して、さてそろそろバスに乗っていくかという感じ。
 



遅刻はなぜだかめちゃくちゃしたくなかった。1番は嫌だけど、幹事の次ぐらいには集合場所に居たい感じ。


迎えてもらうより迎えた方が気楽な気がした。あえてタイプ分けをすると、いわゆるデートとかでは「待つタイプ」なのかもしれない。





というわけで、余裕を持って2本くらい早めのバスに乗れるくらいにバス停に行き、バスを待った。



〜〜


しかし自分は「記録的な豪雪」を全く考慮してなかった。



バスは全然来ないし、ふと冷静に見たら道路はかなりの渋滞だった。



「こりゃまずい」と思った。が、LINEを確認したら、どうやら全員豪雪の影響で、渋滞だったり、仕事が長引いたりしていた。全員間違いなく遅刻だった。




「まあしゃあないな」と切り替えて、寒い中バス停を待つことにした。



それは他のバス停を待っている人も同じだった。もちろんみんな知らない人達だったけど、中には「前のバスの時間から待ってる」などの会話も聞こえてきて、なんか妙な一致団結感を感じてちょっとテンション上がっていた。




すると、僕の横に並んでた男二人組(おそらく高校生)が列から離れた。




まだまだこなさそうなので、一回列を離れようとのことだった。気持ちはめちゃくちゃわかる。だって、バスが来る気配がない。近くのローソンにでも寄るのかな?とか予想してた。




すると、その二人組は予想から反して、すぐ近くの駐車場に場所を移した。俺は意図が全くつかめなかった。そんなすぐ近くの駐車場に行くぐらいなら、大人しくバス停でバス待ってろよって。





するとその二人組は、まさに文字通り「信じがたい行動」を始めた。











「この雪ん中 始めよう フリースタイルラップ
まずは俺の番だぜ 証言1」






その二人組は、即興でラップを始めた。びっくりした。いや本当にびっくりした。本当にあんなに胸が高まることはここ最近なかなか無かった。心拍数が跳ね上がった。




自分が最近めちゃ熱中していることはフリースタイルラップバトルを見ることだった。「こんな歳になって、ここまで熱中できることが見つかるって幸せなことなんだろうな」とも、先日友人に話したばかりだった。




そんな矢先に、こんな幸運に巡り会えるなんて!!!!まさにミラクルな出来事だと思った。





五分くらい二人で掛け合いをしていた。二人組は駐車場でやっているので、全ての言葉を耳にはできなかったが、可能な限り真剣に聞いてた。というか体が完全にそっちに向いてた。





あのメガネのプリンスとシュープラザの前にあるなんてことの無い駐車場が、割と比喩ではなくステージになってた。




しかも、聞こえて来る限り、その二人はなかなか普通に上手いと思った。可能な限り興奮を抑えながら、冷静に聞こうとしても、韻をめちゃくちゃ踏んでいる音が聞こえる度に、また無条件で興奮してしまう。




しかも何がよかったって、その二人組は、片方がラップをしている間、もう片方が「今のヤバイねー!」とか言い合ってたこと。これはひどく感動した。そんなような現象はジャズ、いや楽器をやってても起こり得るけど、それ故に、最近"その感じ"を失っていたなあと痛感し、余計感動した。



〜〜


「流石にバスもう来るかな」となったのか、二人組はラップをやめ、一人だけまた俺の隣に並んだ。どうやら、もう一人は見送りのためについてきてたっぽい。やさしさ。




こうなると、俺のやる事は1つだった。
「あっすみません、、今勝手に聞いてたんですけど、めっちゃカッコよくて感動しました」と伝えること。
これしかなかった。




他の並んでいる人たちは、むしろ、「何やってんのあの二人組、声急に出し始めて」みたいな感じだった。あの見てはいけないものを見ている感じ。




そんなのも予想できるからなるべく気を使って駐車場まで移動したんだろう。だったら尚更俺は「少なくとも感動した人がここにいるぞ!!!!」と伝えるのが、彼にとっても、こんな感情を胸に秘めている俺にとってもいいと思った。





ということで言おうと思ったのだが、また予想外のことが起きる。











なんか恥ずかしくて話しかけれないのである。





自分にとっても、相手にとっても言うことがいいであろうと、ものすごく理解しているのに、「あの、すみません」のたった一言が言えないのである。





バス並んでいるときに知らない人に声かけるなんて変だから声かけない?

ラップしたばかりで疲れているだろうから声かけない?

彼が今携帯をいじっているから声かけない?






そんなものは全部言い訳にしかならない。そんなことはわかっていても、全く喉から声が出ない自分が居た。何度もいうけど、たった「すみません」と一声かけるだけなのに。





そんなことをウジウジしていたら、バスが来てしまった。ぎゅうぎゅう詰め。という言葉がとても適してるレベルで混んでいた。





バスの中で僕と彼は、遠くになってしまった。





自分はバスにいる間、「なんで言えなかったのだろう」とずっと考えていた。本当に自分の弱さを反省した。




そんなことをしていると、自分が降りるところまでバスが到着した。終点ではないので、まだかなりの人がいた。



バスの後ろの方にいたので、混んでいる中グイグイと前の方に進んでいくと、運転手が俺に気づかず出口のドアを閉めてしまった。




俺は「すみません降りますー!」と言った。バスは無事降りれた。





降りた瞬間、本当に自分に対して絶望した。


「言えるんじゃん"すみません"って」。



もちろん、2つの「すみません」は明らかに前後関係が異なることはわかっていたけど、どうしても見過ごすことが出来なかった。



落ち込んだのもあるし、まさか自分が言えないとはという驚きもあった。「自分が自分らしくないなと思うけど、これが今の自分なんだろうな」と思う出来事になった。




完全に飲み会なんてどうでもよくなっていた。まあ行ったけど。忘年どころか絶対忘れられない日になった。





おわり