肺腺癌で右上葉を切除しました(3月下旬)。術後4日目に退院しました。

 

退院まではどこの病院もおそらくクリニカルパスを使うと思います。

私も入院前にもらって、ほぼパス通りで退院しました。

 

パスだと、手術翌日昼ころに歩行開始。初日はまず病室内トイレあたりまで行き、その後病棟1周しました。

胸腔ドレーン1本、PCA(局所麻酔)2本、点滴、心電図モニター(酸素モニターつき)、膀胱留置カテーテル、これらの管だらけで歩きます。。

翌日から管も少しずつ減って歩きやすくなりました。

膀胱留置カテーテルと心電図がとれるとだいぶ動けました。

 

背中の傷と脇の胸腔ドレーンがあるため、上体の曲げ伸ばしが思うようにできないので、トイレでのズボンの上げ下げやふく動作、洗面は思うようにできていなかった(けど一人で何とかやるしかない)です。

 

そして、術前にビデオで寝たままの腹式呼吸訓練と傷を押さえて咳をする、というイメージを見ていましたが、だいぶ現実の体と違いました。

 

まず寝たままの腹式呼吸訓練は、術後はベッドの頭側を下げるとものすごく苦しいので寝て行うはほぼ無理でした。

座って行う程度ですが、息が吸えません(特に鼻から吸えない)。とにかく吸えないです。

あとは咳も、ハッフィングといって、短く息を吐いて痰をのどまであげて出すようにというのが標準の説明ですが、できません。

息の塊をうまく作れない感じがあります。これは術後にいろいろ思ったことですが、最初鼻がかめませんでした。

鼻水を出す、という動作は息の塊で圧力で出すのですが、うまく息がでません(これは1か月くらいでもとのようにかめるようになりました)。

あくびもうまくできません。あくびって息の塊を吸う動作なので、息が入っていかないのでできませんでした(これも1か月すぎでできるようになりました)。

咳は結局できず(そもそも傷が背中なので、押さえながら咳をすることができない、傷に手が届かない)、コホコホとして、たまに出る程度でした。無気肺(肺がふくらまないこと)予防で、息を吸うとか痰を出すことが理想とされているのですが、切っているとできないなと実感しました。

この術前指導は改善したほうがよいと本当に思いました。

 

そして、術後から呼吸リハビリテーションを早期に開始しましょう、というのもいろんなサイトや決まり文句のように外科では言われていますが、体調が安定しないとできそうにないと思いました。無理にするとかえって回復をさまたげるだろうと思いました。

本来は、呼吸リハビリテーションは、ただ呼吸練習をするのではなく、呼吸を支える筋肉や骨格を使い、全身を使って肺の可動性をあげる訓練です。しかしながら、いろんなサイトの訓練方法は器具を使うか、腹式呼吸くらいなので、いまいちだなと思いました。

そして全身を使えるようになるのは、痛みがなくなって、身体のまげのばしができて、呼吸状態が安定してからなので、本来のリハビリは術後2週間以降に全身状態が改善し始めてからスタートでよいのではないかと思います。

 

それまでは、体力回復第一で行くようにして、トイレとベッドの行き来や、病棟内を歩ける人は歩く、くらいでよいと思います。

退院後は家の中のことを中心に自分のことがやれる程度でよいと思います。

痛みが減ってきたら、ウォーキングや運動負荷をかけたり、ストレッチをする、呼吸訓練器具で強化するとよいと思います。

術後1か月はアルブミンも一気にさがり、低栄養になっています。また、傷が治るまで微熱や炎症反応もあるので、無理をすると悪化する可能性もありますので、リハビリと言っても筋力低下しないていどの室内運動中心でよいと感じました。

肺を切って、酸素化も悪くなるのでちょっと動いただけで、ぜーはーと息苦しくなりますので、息を整えるか休憩しながら動くしかないです。

術後1か月を過ぎると息切れも活動に応じて減ってくる感じでした。

 

肺の切除方法によっても術後の呼吸苦は差があるようで、残存の肺機能への影響は肺葉切除だと1個20%減、区域切除などの部分切除は5~10%程度の減少しかないので、息切れや咳などの程度の違いが術式によって変わります。標準術式は肺葉切除なので、20%減が多いのかなと思います(私も肺葉切除)。日常生活では息切れが改善しても、重いものをもったり、階段をのぼったりなどの負荷時にはこの切除方法の差が呼吸困難に出てくるようです。負荷をあげるトレーニングで改善もできるようですが、完全にもとには戻らないというデータもあり、どうなるのかなと思っています。

 

呼吸訓練に際して、胸帯が圧迫するのではないかという疑問がありました。

肋骨1本切ってつないでいるので、通常は痛みがなくなるか、骨がくっつくまで(3か月?)つけることが多いようですが、エビデンスが見つかりませんでした。主治医も、よくわかっていないようで、「外したいなら外してもいいですよ」というお返事だったので、術後3週目くらいで胸帯はやめてしまいました。つけていたものも乳がんの術後用のものでソフトだったのですが、寝る時に苦しいのは胸帯のせいかなと思い始めて、やめてみました。はずしてタンクトップにして数日は何となく不安な感じでしたが、結果的には何の影響もなかったです。

文献によると、肋骨や肺はもともと呼吸で開いたりちちんだりするので、固定していても万全ではない、とあったので、固定の意味は気休め程度と術後早期の疼痛緩和なのだろうと思いました。

 

今、2か月半すぎになって、咳はまだ出ています。話したり歌える程度にはなりましたが、食後などは咳が出やすいです。

息切れは重いものをもつとか階段ででるので、そろそろ運動負荷をかけて行動範囲を広げていく時期なのかもしれません。