氷艶2024の感想です。今回はキャスティングについて。

 

 

第一印象は「地味?」

公演を観終わった今はこれ以上ないキャスティングだったと思っていますが、第一印象は正直言うと「地味?」というものでした。

まず俳優陣。個人的にお名前をしっかり知っていたのはエハラさんのみ。ミュージカルに出演されているのも知っていた。でも本業は歌ネタのお笑い芸人さんよね?大輔さんのお隣にいる小野田さんは実力派ミュージカル俳優らしいけどお名前をどこかで聞いたことがあったかなという程度。氷艶2019(月光かりの如く)の国民的歌姫(平原綾香)、宝塚の元トップスター(柚希礼音)、テレビで活躍する有名俳優(西岡徳馬、福士誠治、波岡一喜)と比べると「なんか地味?」という印象でした(ごめんなさい)。

 

次にスケーター。主演の高橋大輔とそのパートナー村元哉中、荒川静香は予想通りとして、後から追加されたのは(スケオタ人気はあるが)世間的にはまだ知名度の低い友野一希と島田高志郎。(和物なのに)ステファン・ランビエールやユリア・リプニツカヤもいてキャストを見るだけでワクワクした2019と比べるとやはり地味に感じられました。

 

 

トキオ(ジョバンニ)トカケル(カンパネルラ)

キャスティングは2019も2024(大野拓朗さん除く)も宮本亜門さんです。源氏物語を題材にした氷艶2019で、宮本さんは光源氏(高橋大輔)の兄であり政権や恋のライバルでもある朱雀帝高橋大輔が嫉妬するほどのスケーターであるステファンを選びました。表現においても華やかさにおいてもこの二人が競うような展開を望んだのでしょう。

 

一方、氷艶2024は宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」を元にしています。

 

 

 

↑こちらから登場人物の説明をお借りします。

 

ジョバンニ
病気の母と暮らす、貧しくていじめられっ子の少年。活版所でアルバイトをしながら学校へ通う。父は漁に出ていて不在だが、監獄にいるとうわさされている。

カムパネルラ
クラスの人気者で物知り。ジョバンニとは同級生であり友達で、父親同士も親しい間柄とされている。父は博士。

 

貧しいいじめられっ子で銀河鉄道の旅をして帰ってくるのが主人公のジョバンニクラスの人気者でジョバンニと一緒に旅をするが実は亡くなっている(クラスメイトを助けようとして川に落ちて行方不明)のがカンパネルラ派手な見た目でショーの主演である高橋大輔はカンパネルラ(カケル)で決まり。キャスティングはジョバンニ(トキオ)役を探すところから始まり、(勝手な想像ですが)ミュージカルスターの中では比較的おとなしめのお顔立ちの小野田さんに亜門さんが声をかけたんじゃないかと思います。十字星のキセキには原作のいじめられっ子とクラスの人気者という対比はありませんが、博愛主義的なカケルとカケルにだけ執着するトキオという構図から、陰(トキオ)と陽(カケル)的な対比はあったと思われます。ところが、小野田さんの降板で代役となった大野拓朗さんは大輔さんより20センチも背が高く、顔も派手でスクールカースト最上位みたいな人(ミスター立教ですからねw)。この時点で(台本が同じであっても)トキオとカケルの印象はかなり変わったんじゃないかと思います。実際は大野さんが演技で陰の部分(ユキに嫉妬するところなど)を表現されていたので違和感はなかったですし、どちらのファンも(大きいイケメンと小さいイケメンのw)「トキカケコンビ…尊い…」という感想になったので結果的にはよかったんじゃないでしょうか。後からわかったことですが、大野拓朗さんを推薦した(舞台を観て知っていた)のが高橋大輔さん自身だったのも驚きでした。そして、大野さんのスケジュールが空いていたのも急遽用意したスケート靴がぴったり合ったのもまさにキセキ。運命的なものを感じます。

 

少年時代

2人の少年時代を演じたのが友野一希(カケル)と島田高志郎(トキオ)。雑誌の対談で友野くんが大輔さんの少年時代を演じると明かされたとき、驚いた人も多かったと思います。だって顔が全然似てないから(笑)。でも、実際は顔が似ていることよりも遠目に中学生に見えることの方が重要だったみたい。二人とも童顔で骨格が華奢なので制服を着たら十分中学生に見えました。ジュニアの選手を使うという手もあったと思いますが、セリフもスケートも溌溂とした感じがよく出ていて、このキャスティングは大正解だったと思います。銀河鉄道編では友野くんは災害(たぶん津波)で家族を助けて自分だけ命を落とした青年、島田くんはLGBT的なキャラクターを演じています。友野くんは本人のイメージに合った役だと思いますが、島田くんは本人のイメージとも違うし、大評判だったワンピースオンアイスのサンジと真逆と言ってもいい役。この二人は大輔さんが焦るぐらい最初から演技も歌も上手かったそうで大当たりのキャスティングだったと思います。

 

 

ユキと富豪夫人

役にぴったりな人を見つけてきたのが友野くんと島田くんだとしたら、主演の高橋大輔と共に最初から出演が決まっていたと思われるのが村元哉中、荒川静香の二人。ユキと富豪夫人はこの二人に合わせて作った役だと思います。ユキの夢がバレリーナ(男子二人は学者さんなのに)なのも富豪夫人がベリーダンス風衣装なのも、二人の身体表現の美しさを生かすためでしょう。荒川さんは月光かりでセリフに苦労したためか今回はセリフなし哉中ちゃんはボイトレをがんばっていた割には歌はほとんどなく(複数人で歌っていたところはあったけど声が小さくて現地ではわからず)、セリフも少なめでしたね。荒川さんは帰りの銀河鉄道の可愛い車掌さんとの二役。哉中ちゃんはユキという重要な役(現世と死後)を演じながらまりゑさん率いるおばあちゃんたちの中にもいたのには驚きました。哉中ちゃんはアイスダンサーだけどソロでも魅せられて振付も出来る貴重な存在。まだまだいろいろな役が出来ると思いますし、荒川さんは若いころより魅力と存在感が増していると思います。

 

 

俳優陣(トキオ以外)のキャスティング

最初は地味だと思った俳優陣。終わってみれば実によく考えられた配役だとわかりました。それぞれメインの役柄を一つずつ持ちながら、時には別の役柄も演じ、その他の場面では合唱隊(=コロス)として活躍。4人がそれぞれメインキャスト+アンサンブル+合唱隊)の3役という感じですね。個人的に一番驚いたのがまりゑさん。なんとメインの役柄がおばあちゃん!公式ホームページのビジュアルを改めて見ると彼女だけがコロスの衣装なんですね(宇宙っぽいキャラクターなのかと思っていました)。こんな若いお嬢さんにおばあちゃん役をオファー?と不思議に思って調べてみたら子役からやっているかなりベテランの女優さんでした(大輔さんと同学年)。ちなみにエリアンナさんも同学年です。本職はお笑い芸人のエハラマサヒロさんの多才ぶりにも驚きましたし、長谷川開さんは歌唱指導も担当。今回特に重視されたのは「歌唱」だと思います。歌が初挑戦のスケーターもいる中、ゆずのファンの方が聞いて納得できるクオリティに仕上がったのは合唱隊の力が大きかったと思います。

 

 

アンサンブルスケーター

今回のアンサンブルはスケーターが15人とアクロバット隊が4人。ちなみに2019スケーター7人俳優11人、アクロバット5人。構成が明らかに違いますね。アクロバット隊はスケート靴を履かないので、スケート教室対象者はメインキャスト5人のみ。スケーターはPIW、元PIW(プロ)と滑走屋(現役選手)が中心。これまで(LUXE含む)と比べて圧倒的なスピード感がありました。そんな中特に印象的だったのがユキの少女時代を演じた占部亜由美さん。吉川友真さん(LUXEでは福士誠治さんの初日代役)と共にディズニーオンアイスでご活躍の方。占部さんと杉田明花里さんは友野一希くんと同じ平池先生チームのご出身。占部さんはセリフも歌も上手いというレベルではなく発声がプロって感じでした。

 

 

 

やっぱりプロですね。吉川さんもスケーターと合唱隊の両方に参加していて多才な方ですね。

 

 

アクロバット隊

アクロバット隊の皆さんは横浜からの参加でしたが、役を演じながらセットを移動させたり、トキオ(大野さん)が倒れこむ場面で下で受け止めたりスケーターには出来ない重要な役割を果たしていました。ショーの冒頭で大野さんが客席にいるのに後ろ姿のトキオが倒れる場面、あれもアクロバット隊の方が演じていましたね。ただ、せっかくのアクロバットがスケートと同時進行で行われることが多く、近くの席の人以外にはわかりにくくてもったいないと感じました。もうちょっと見せ場があってもよかったんじゃないかなと個人的には思いました。

 

 

キッズスケーター

今回メインキャストの少年時代は大人スケーターが演じましたが、後半の重要なシーンでキッズスケーターがたくさん登場しました。練習などでお世話になっている南船橋のリンクを拠点とするMFアカデミーの生徒さんたち。みなさんスケートだけでなく表現もお上手。試合とも通常のアイスショーとも違うこの舞台に立ったことは貴重な経験になったんじゃないでしょうか。

 

 

全体

トキオとカケル以外は全員が何役もこなす無駄のないキャスティングだったと思います。衣装替えや動線などかなり緻密に決められていたんじゃないかな。かなりハードな舞台だったと思いますが、これまでの氷艶シリーズ同様、キャストの皆さんの間に強い絆が生まれているようですね。

 

 

 

 

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