第238話「One for All , All for J1」
全国の中学3年生が松尾芭蕉の俳句を学んでいる11月上旬、早いところでは期末テストの準備も始まった。夏草や/つはものどもが/夢の跡。一つ違うのは今年の場合は日本中を巻き込んだ一生に一度の祭りが一つ幕を閉じたばかりであるという点だ。日本代表の躍進はもちろん、ジャパン以外の対戦の盛り上がりや選手の振る舞い、各国からやってきたファンの楽しみぶりやボランティアスタッフさんの献身などなど、大会の閉幕後には場面場面を思い出しては涙腺を湿らせることを繰り返しているうちに1週間が経っていた。つはものどもが夢の跡、これがロスじゃなければ何と呼ぶのか、僕は知らなかった。
北九州市とウェールズ代表チームの開幕前キャンプから今もなお続くラブラブな関係、福岡県福岡高校出身の福岡堅樹が要所で挙げた4つのトライ、博多の森で開催された3試合など、もともとラグビーが盛んな福岡県内でも熱が高かったであろうことは想像に難くない。個人的にはサモア代表チームがホークスの試合に招待されて観戦したエピソードと博多で観戦中のアイルランドサポーターが太宰府天満宮の合格ハチマキを巻いていた姿という二つの話が相当好きだ。世界一を競う大会で各国が最強で最高のメンバーを揃え観戦するファンも4年分弾けるとこういうことになるのかぁ~と実際に触れてみて味わってみて初めて知る、勝ち負けよりも大切なもの。
大多数の人間から不可能だと思われていることに本気で取り組むこと。スポーツにおいて観る者を惹き付ける要素の一つは『狂気』なのではないだろうかと考えてみた。ジャパンがアイルランドに勝つことを誰が事前に予想し得たのか、同じように考えると3年連続J2最下位だったヴァンフォーレ甲府が存続の4年後に昇格を果たすことを誰が予想し得たのか、とも言える。願う願わない、信じる信じないを超えた次元への挑戦が目の前にあるのであれば…たとえそれがミラクル染みた低い可能性へのチャレンジだったとしても…見届けるのがファンの使命というものなのだろう。理論上は今週から上位のモタつき込みで6試合を全部勝てば来年はJ1だ。突き進んで行こうWinding Road
もちろん、現在の位置を考えると今週から3試合で終わる確率の方が高いのが実際のところだ。成か否か、どちらに転ぶかが分からない以上は観客席からフィールドへ戦えそうな雰囲気を届ける役割に力を入れる以外にあるまい。これから何年何十年と続いていく歴史を思えば2019シーズンの証を残すことの方が大事だと思っている。ゴールはプレーオフじゃない。昇格するだけではまだ終わりじゃない。
【2019年11月10日 バス小瀬新聞 アビスパ福岡戦号】