昨年、落合監督の書籍『采配』を読んだ。本の一説でとても印象に残った一文があったので、遅ればせながら紹介したい。

今、手元に書籍がないので記憶で書くのだが、落合監督が選手の頃、ヒーローインタビューでホームランを打ったことについて訊かれても、正直に答えなかったそうだ。どうしてあそこでホームランを打てたのかを話してしまえば、敵チームに有利な情報を与えてしまうというのが理由だ。これは、優れた戦略家の発想だ。

ともすれば、世の中の人は自分の能力やスキルを公開し過ぎている。手の内を全て明かしてしまって、隠し技の一つや二つ用意していない。それでは駄目なのだ。『能ある鷹は爪を隠す』という諺がある。落合監督はまさにそれ。全て公開している様では、競争や勝負事には勝てない。脇が甘いと言える。

私も日々新しい技を磨いているが、どんな風に磨いているのか、何をインプットしているのかは公開していない。能力を見せる時も小出しである。それぐらいでなければ、したたかに戦えないのだ。本当にタチの悪い戦略家は、ウソまで言う。「私、こうやって成功しました(嘘)」とかは朝飯前だ。それが、賢い戦略家なのである。

世間に安く売られている情報とか真に受けないほうがいい。本当に利口な人は、訊かれてもいない事をベラベラと語らないものだ。

それでは、この話はここら辺で終わりにしよう。