皆の者、めりいくりすます。
加藤清正じゃ。


此度は名古屋城への登城、まことに大儀である。
本日はいえすきりすと公の生誕日と伝えられる日。
そして加賀百万石の祖、前田利家様の生誕日。
更には名古屋開府の祖にして江戸幕府初代将軍、徳川家康様の生誕日前日。
実にめでたき日であるな。
各々様方に想いを馳せ、存分に祝おうぞ。



さて、此度取り上げる歌は小倉百人一首の二首目にして春の歌。
先日取り上げた一首めの和歌を詠んだとされる天智天皇の次女にして天武天皇の后、持統天皇御製のもの。


「春すぎて 夏来にけらし 白妙の
衣ほすてふ 天の香具山」
(はるすぎて なつきにけらし しろたえの
ころもほすてふ あまのかぐやま)


そう、以前取り上げたことのある和歌じゃな。
わかりやすく今の言葉にするとこのような意味となるかな。
「いつの間にか春が過ぎ夏が来たようだ。夏になると、あの天香山に白い衣が翻ると言うから」


これは以前述べたように万葉集から少し形を変え再録されたものであるが、より語調が柔らかく、即ち素朴で力強い印象から穏やかで優雅な聴き感触のものとなっている。
目の前で行われている事実から伝聞に変わっているという時代の変遷とともに、当時の歌壇に合わせ趣向を凝らされた結果ともいえようの。


この白い衣を干すと言う営み。
小倉百人一首が編まれた頃には既に行われなくなってしまったものだそうじゃ。
「昔はそうだったらしいが」という解釈にもできるように整えられておるということかの。


そしてこの歌。
夏が来たということを実に伸び伸びと活写していると同時に、季節が正しく移り変わることを慶び、天皇の政治が正しく行われていることを示す内容も含まれている。
古の時代には、治世の乱れが森羅万象の乱れに通じると考えられておったのじゃよ。


この短き言の葉の連なりの中に、単純ながら幾重にも織り込まれた意味。
日の本の民が察しの文化を持ち、文脈を読む事に長けておるのは和歌を見るとさもありなんという心持ちになってくるのう。
善哉善哉。


さて、此度の話はここまで。
ちと難しくなってしまったが、楽しんでくれたかの。
皆の心に少しでも響けば嬉しい限りじゃ。
次は三首目、今で言うところの宮廷詩人の歌を紹介致す。
楽しみに待っておってくれ。


加藤清正