皆の者、息災か。
加藤清正である。



先日、九月十三日に公開さるる「人間失格 太宰治と3人の女たち」の試写に行って参った。
大文豪太宰治殿の生涯が、丹念且つ艶やかに描かれまことに耽美的な映像運びであった。



此の儂清正。
蘇ってより純文学を学んで参ったが、太宰治殿の人間性、脆さにこれほど共感出来る事はこれまでなかった。
不道徳、頽廃という印象が付き纏う太宰殿であるが、その心はひとえに自らの居場所を求めていた赤子のようなものであったのかとはたと気が付いた次第である。


折々映される自然の情景の見事な事。
色彩が波となって胸に迫る。
文学とは、表現とは、人間とは。
そして、生きる事とは。


我らの世では、まこと生きる事は戦いそのものであった。
太宰殿も、苦悩し、煩悶し、また生きる事を闘った御仁であったと深く感じ入った。


太宰殿の厭世感はまた自らの実存と闘争し、社会から切り離された己を救うための方便だったように思える。
儂らは対外的な敵を敵と認識しまた戦う事が出来たが、かの者達はその刃を自らに突きつけるしかなかったのであろうな。
まことあはれなものよの。


此度の映画、まこと胸を打つ良き作品であった。
文学的気風を感じたき者、頽廃を覗き込みたき者、圧倒的美に耽りたい者。
九月十三日より全国公開じゃ。
刮目せよ。




加藤清正