皆の者、息災か。
加藤清正である。



本日は秀吉様、利家様、太助、なつと共に豊臣家の布陣にて名古屋城に出陣して参った。
されども生憎の雨。
午前午後共に演武は中止と相成った。
演武を楽しみに城に参った者共は残念であったのう。



さりながら儂は、この恵の雨のもと登城して参った多くの者とより深く交流を図ることが出来た。
まことに充実した日であったとしみじみ思うておる。


日輪の如き秀吉様のもとに笑顔で駆け寄る童。
軒下にて家臣に囲まれ、月の如き静謐さを以って天を見上げる利家様。
雨が降ったからこそ観ることの出来る、格別なる画であった。


「大空の  雨はわきても  そそがねど  うるふ草木は  おのがしなじな」


千載和歌集に収められし僧都源信の作。
「雨は分け隔てなく振り注ぐが、その受け取り方は己が様々である」
そのような歌意になるかの。
僧が詠みし歌であるが故「雨」は「仏の教え」と解釈されがちではあるが、ありとあらゆる語句が当てはめられような。




しかし今日はこの歌をこの語句の通り受け止めたい。
本日名古屋城にて広がりし光景はまさしくこの歌の通りであった。
我ら戦国の者はもとより、登城せしめた皆々が各々の「雨の名古屋城」を楽しんでくれたと想う。




ゆめゆめ雨であるからと残念に想うことなかれ。
存外に、心の持ちよう次第で新しき風光が観えてくるものよ。





加藤清正