前田又左衛門利家也。
弟が居た。
儂によう似た弟が。
曲がった事が大嫌いな弟は、筋が通って居らぬと知れば誰彼無く其の事を咎めた〔とがめた〕。
弟が居た。
儂によう似た弟が。
儂と同じく許せぬ事を許せぬと己が正義を推し通し、御屋形様〔信長様〕の御不興を買い織田家を出奔致した。
弟が居た。
儂によう似た弟が。
父から授かりし将軍地蔵を譲ろうと致したが断られた。
人の心を救う筈〔はず〕の地蔵菩薩を人間の勝手で争いに加担させるは此れ解せぬ〔げせぬ〕事と申した。
弟が居た。
儂によう似た弟が。
帰参を願い参戦致した三方ヶ原の戦いにて、命を散らした。
親より先に命を散らした弟は、親の心を殺した。
佐脇良之の人生は、儂の人生に成って居ったのやも知れぬ。
共に赤母衣衆と成りて戦いし日々が懐かしい。
彼の日、彼の時、無理にでも将軍地蔵を握らせて居れば。
良之は又、儂と共に戦場を駆け抜けたのやも知れぬ。
人生、先は解らぬ〔わからぬ〕。
此れは、万人に唯一与えられた平等で在ろう。
故にこそ、一寸先は光と思うて生きるが善し〔よし〕。
今を生きる。
人を背負うて生きる事こそ、儂に課せられた役目なのやも知れぬ。
誰よりも花を愛で季節の移ろいを眺める事が好きで在った美しき良之を思いて、いま名古屋城の桜を眺めて居る。
間も無く、名古屋城は桜に染まる。
皆も大事な者と共に花見に参るがよいぞ。
改めて、名古屋城へ登城せし皆々よ。大儀。
本日は、久屋公園にて催される旅まつり参陣。
麗らかな一日。
皆が恙無く過ごせる事を願うて居る。
名古屋おもてなし武将隊 一番槍
前田又左衛門利家