又左衛門也。
皆の衆、息災であるか。
昨日より始まった、前田利家的演武考察。
本日は引き続き「長篠の戦い」についてである。
・秀吉の巻
これは秀吉さえいれば披露可能な演目である。
演目は織田・徳川連合軍が長篠の戦いに勝利した後、秀吉に対し「敗走する武田軍を殲滅せよ」との命が下ったところから物語が始まる。
出陣令を出した秀吉に対し、家臣等は問う。
「敗走する敵に追い打ちをかけるなど・・・」
「出世の為に人を殺めるのですか?」
この言葉は血を流す事を嫌う秀吉の事を理解している家臣だからこそ出た言葉なのであろうな。
しかし、逆に秀吉は問う。
「何故戦をするかわかるか?」
この問いに対して解らないという家臣に秀吉は力強く言う
「人を生かす為じゃ!!」
今我等が流さんとする血はこの先にある安寧の世の為に必要な血である。
だが、もう繰り返しはしない。
だから汚した手は一生忘れない。
そんな秀吉の姿に家臣は心打たれ、敵を追う覚悟を決めるのだ。
人を生かす為
この先の日の本に生きる者達が笑って過ごせる世を創る為に戦う。
そんな秀吉の決意が伝わる演目である。
・徳川家康の巻
これは徳川殿に加え、儂もしくは清正がおれば行う事可能な演目である。だが、今回は儂が相手役の場合を考え書かさせて頂く。
演目は、長篠決戦より遡る数日前の夜。
陣所において一人佇み遠くを見つめる徳川殿を見つけ儂が声をかけるところから物語は始まる。
「徳川殿!いよいよ決戦ですなー!!」
儂は滾っていた。なんせあの武勇誉れ高い武田を討つ寸前まできているのだ。
武人として滾らぬ筈がない。
だが、徳川殿は表情を変える事なく言い放った。
「御主は自分の死に様についてどう考える」
あまりに薮から棒であった。
これから大戦だと息巻いている儂に対して死に様を問うとは・・・
「儂は戦場で槍を振るい死ねれば本望じゃ」
本音であった。武人として 果てるのは戦場 と思うのは至極当たり前の事。
そして徳川殿はその真意に触れる事なく一人の男の名を口に出した。
「鳥居強右衛門を知っておるか」
鳥居強右衛門と申せば長篠城を武田方に包囲され落城間近という時に、足軽の身分ながら泳ぎが得意である事を自ら申し出
徳川殿の元に救援を求めにきた者。
その忠義は織田家中でも話題となった。
だが、話によればその鳥居が捕らえられ味方に救援がくる事を伝えた後に落命したと・・・
全てを語り終えた後に「真の武士であった」と云う徳川殿の目はまた遠くを見つめている様であった。
「徳川殿もその様に果てられたいのか」
そう問う儂に対して徳川殿は云う。
「儂は御主の様に戦場で果てたいとは思わんのじゃ。」
儂は耳を疑った。何故ならば、武人なら誰もが戦場にて果てる事を美学としていたからである。
「儂は静かな世を創り、床の上で死にたい。故にこうして戦場におるのじゃ。」
乱世に産まれ、乱世を生きる者は皆戦場を死に場所と考える。
だが徳川殿は違った。
自分が戦場にいるのは、戦のない世を創り
人々が人生を全うし床の上で安らかに眠る事の出来る世の中を創る為。
そして、「床の上で死にたい」という言葉には
自分が生きている内に戦のない世を現実のものとして自身も床の上で安らかに眠るのだ。
という徳川殿の強い意志を感じられる演目である。
さあ。本日は信長様亡き後にこの日の本を統べる事となる二人の男の長篠の戦いについて述べさせて頂いた。
明日は前田家の登場。
楽しみに待て。
では、
此れにて御免。
前田 又左衛門 利家
皆の衆、息災であるか。
昨日より始まった、前田利家的演武考察。
本日は引き続き「長篠の戦い」についてである。
・秀吉の巻
これは秀吉さえいれば披露可能な演目である。
演目は織田・徳川連合軍が長篠の戦いに勝利した後、秀吉に対し「敗走する武田軍を殲滅せよ」との命が下ったところから物語が始まる。
出陣令を出した秀吉に対し、家臣等は問う。
「敗走する敵に追い打ちをかけるなど・・・」
「出世の為に人を殺めるのですか?」
この言葉は血を流す事を嫌う秀吉の事を理解している家臣だからこそ出た言葉なのであろうな。
しかし、逆に秀吉は問う。
「何故戦をするかわかるか?」
この問いに対して解らないという家臣に秀吉は力強く言う
「人を生かす為じゃ!!」
今我等が流さんとする血はこの先にある安寧の世の為に必要な血である。
だが、もう繰り返しはしない。
だから汚した手は一生忘れない。
そんな秀吉の姿に家臣は心打たれ、敵を追う覚悟を決めるのだ。
人を生かす為
この先の日の本に生きる者達が笑って過ごせる世を創る為に戦う。
そんな秀吉の決意が伝わる演目である。
・徳川家康の巻
これは徳川殿に加え、儂もしくは清正がおれば行う事可能な演目である。だが、今回は儂が相手役の場合を考え書かさせて頂く。
演目は、長篠決戦より遡る数日前の夜。
陣所において一人佇み遠くを見つめる徳川殿を見つけ儂が声をかけるところから物語は始まる。
「徳川殿!いよいよ決戦ですなー!!」
儂は滾っていた。なんせあの武勇誉れ高い武田を討つ寸前まできているのだ。
武人として滾らぬ筈がない。
だが、徳川殿は表情を変える事なく言い放った。
「御主は自分の死に様についてどう考える」
あまりに薮から棒であった。
これから大戦だと息巻いている儂に対して死に様を問うとは・・・
「儂は戦場で槍を振るい死ねれば本望じゃ」
本音であった。武人として 果てるのは戦場 と思うのは至極当たり前の事。
そして徳川殿はその真意に触れる事なく一人の男の名を口に出した。
「鳥居強右衛門を知っておるか」
鳥居強右衛門と申せば長篠城を武田方に包囲され落城間近という時に、足軽の身分ながら泳ぎが得意である事を自ら申し出
徳川殿の元に救援を求めにきた者。
その忠義は織田家中でも話題となった。
だが、話によればその鳥居が捕らえられ味方に救援がくる事を伝えた後に落命したと・・・
全てを語り終えた後に「真の武士であった」と云う徳川殿の目はまた遠くを見つめている様であった。
「徳川殿もその様に果てられたいのか」
そう問う儂に対して徳川殿は云う。
「儂は御主の様に戦場で果てたいとは思わんのじゃ。」
儂は耳を疑った。何故ならば、武人なら誰もが戦場にて果てる事を美学としていたからである。
「儂は静かな世を創り、床の上で死にたい。故にこうして戦場におるのじゃ。」
乱世に産まれ、乱世を生きる者は皆戦場を死に場所と考える。
だが徳川殿は違った。
自分が戦場にいるのは、戦のない世を創り
人々が人生を全うし床の上で安らかに眠る事の出来る世の中を創る為。
そして、「床の上で死にたい」という言葉には
自分が生きている内に戦のない世を現実のものとして自身も床の上で安らかに眠るのだ。
という徳川殿の強い意志を感じられる演目である。
さあ。本日は信長様亡き後にこの日の本を統べる事となる二人の男の長篠の戦いについて述べさせて頂いた。
明日は前田家の登場。
楽しみに待て。
では、
此れにて御免。
前田 又左衛門 利家