今日の『健康情報局』 − 認知症予防の切り札はメタボ克服にあり 1 − | 武士が語る 名言・格言

今日の『健康情報局』 − 認知症予防の切り札はメタボ克服にあり 1 −

『健康情報局』
   − 認知症予防の切り札はメタボ克服にあり 1 −

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 超高齢化の道をひた走る日本では、認知症患者は、2012年時点で462万人。
“予備軍”とされる、軽度認知障害(MCI)の400万人と合わせ、862万人に達するといわれています(厚生労働省研究班、代表研究者=朝田隆・筑波大教授)。
これは65歳以上の高齢者の、実に4人に1人に相当する数字で、
10年以内に1000万人を突破することは確実だと見られています。
この認知症も、実はメタボリック・シンドロームと浅からぬ関係があります。

<メタボは血管性認知症の源流にあり、アルツハイマー病にも関係>

認知症には様々な種類がありますが、半数以上を占めるのがアルツハイマー病。
次いで約2割が血管性認知症、レビー小体型認知症と続きます。

 血管性認知症は、脳卒中の後遺症で、神経の細胞に栄養や酸素が行き渡らなくなって、
その部分の神経細胞が死んでしまったり、神経ネットワークが壊れたりして、生じるものです。
メタボ→動脈硬化→脳梗塞という流れの結果として起こる病気なので、
動脈硬化を促進する高血圧・糖尿病・脂質異常症、メタボなどの生活習慣病、
そして喫煙が危険因子に挙がるのは、当然のことです。
メタボになると、血管性認知症の発症リスクは跳ね上がります。

 一方、アルツハイマー病も同様に、メタボが発症のリスクとなります。
アルツハイマー病の患者の脳の中では、アミロイドβという蛋白質が過剰になって
神経細胞に沈着していくために、神経原線維変化が起こり、神経細胞死を経て脳委縮が進行します。

 アルツハイマー病に関連した遺伝子変異は、いくつか発見されていますが、
最も関係が高いとされているのが、ApoE4です。

ApoE(アポリポ蛋白E)は、主として肝細胞で産生され、
全身の他の臓器へのコレステロールや脂肪酸の運搬に関与しています。
ApoEを決める遺伝子(対立遺伝子)には、ε2、ε3、ε4があり、ε4の遺伝子数が増加するほど、
より若くしてアルツハイマー病を発症し、発症率も高まります。
日本では、約10人に1人はε4を有していますが、遺伝子診断をしないと、それは分かりません。

 国立長寿医療研究センター副院長の荒井秀典氏は、
「ApoE4を持っていると、アルツハイマーになるリスクは2〜4倍に上昇するとされます。
しかし、その程度の差であれば、中年期(40〜65歳)にしっかり運動するなどして、
生活習慣病を退治すれば、アルツハイマー病発症も予防できる可能性があります」といいます。

 そう、ApoE4と並び立つ危険因子こそは、生活習慣病、すなわち、メタボ。メタボの上流にある、
内臓脂肪から生じたインスリン抵抗性は、ApoE4によるアミロイドβ集積を加速します。
一方で、インスリン抵抗性から発症した糖尿病は、脳内のインスリン・シグナルを低下させて、
アルツハイマー病を進行させると考えられています。

 はっきりしたメカニズムは不明ですが、高血圧、脂質異常も、
それぞれ独立して、アルツハイマーの危険因子になることが知られています。
それらが複数重なったメタボならば、より強力なリスク因子になります。
残念ながら、64歳以下で発症する若年アルツハイマー病は、
より遺伝的要因が強いので、メタボとの関係性は低いですが、
圧倒的に多い高齢期のアルツハイマー病予防にとって、メタボ対策に勝るものはないでしょう。

日経GOODAYより