今日のいい話− ロシナンテス・・・大切な何か − | 武士が語る 名言・格言

今日のいい話− ロシナンテス・・・大切な何か −

今日のいい話は ロシナンテス・・・大切な何か でござるむ。



 NPO法人/国際NGOロシナンテスの理事長・川原尚行さんです。川原さんは、
仲間と一緒に、スーダンで医療を中心に活動しています。九州大学・医学部を
卒業し、大学病院でお医者さんをしていました。

 32歳のとき、外務省の医務官となりタンザニアで大使館に勤務します。そ
して、次の国・スーダンで医療を受けられない人たちを目の当たりにして、外
務省を辞めて一医師として診療を行う決断をしたのです。

 さらに、3.11東日本大震災の後、いてもたってもいられず、被災地へ駈
けつけます。そして、避難所でみんなと一緒に暮らしながら、診察だけでなく、
心のケアも行いました。今は、スーダンと東北を行ったり来たりの日々です。

 スーダンで医療を行うといっても、最初は設備の揃った病院があるわけでは
ありませんでした。そこで、部族の村を巡回して診療していきます。これが、
なかなか大変だったといいます。もちろん、無医村なので、村人の家に泊めて
もらいます。最初から、

「身体の悪い人は診てあげるから来なさい」

と言っても、誰も川原さんのところへ来ません。まず、その部族長に挨拶に行
きます。

「私は、日本人で、ボランティアで病気の人たちを治している」

のだと。それから、一緒に食事をし、寝泊りをします。そうすることで、やっ
と信じてもらえる。何よりも仲よくなることがスタートなのだといいます。
 患者がやってくると、近くで部族長が見ています。すると、みんなは安心し
て診察を受けてくれます。患者と医師の間には、信頼関係があって初めて診察
ができるのですね。次の村へ行くとき、部族長に申し送りをしてもらいます。
それを信頼して、次の村でも診察をすることができます。

 スーダンは、宗教の違いや部族間の対立などで長い間、内戦状態にありまし
た。それだけに身の安全の確保も大切になります。部族長同士が、信頼に基づ
いて川原さんを守ってくれるわけです。

 一緒に食事をするといっても、ただそれだけのことが大変。本当は、ペット
ボトルの水を持って行きたいところですが、あえて出された水を飲みます。た
まに、濁っていることもある。当然、それを飲めばお腹が壊れる。下痢は当た
り前。診察中にお腹がゴロゴロいって、トイレに駆け込むこともあります。

(どっちが患者だか・・・)

パンツに漏らしてしまい、ノーパンで診察したこともあるそうです。夜、満天
の星空の下で車座になって食事をします。空には、月がないときには大きな天
の川。南十字星も見える。食事は素手の右手の指で取ります。みんさなで囲ん
で食べる食事は、ことのほか美味しいといいます。電気も水道もありません。
日本に帰ってくると、コンビニに行けば何でも手に入る。スーダンには何もな
い。

「でも、本当にそうなのだろか」

と川原さんは力を入れて言います。日本は何でもあるけど、何かを失ったので
はないか。大切な何かを。スーダンには、何もないけれど、大切な何かがある。
その何かがそのまま残っている。その「何か」について考えさせられました。