中2のある日の昼休みのこと。
クラスメイトのアニメオタクのT君が
「北斗の拳ごっこしない?」
と僕を誘ってきた。
僕も北斗の拳は好きだし、断る理由も
ないので、すんなりOKした。
T君は嬉しそうに台本を取り出した。
なるほど、再現しようというのですね。
念入りに打ち合わせをして、台詞も
覚えて、早速始める事に。
僕はチビで、T君はノッポ。
当然、僕がケンシロウ役にされた。
「只今より、ケンシロウVSラオウの
闘いの始まり始まり~。」
隣にいたY君が客寄せを始めた。
T君「ケンシロウ、うぬがどれほど
強大になっていようとも、
このラオウを倒す事はできぬわ。」
T君は拳を繰り出し、僕はそれを
簡単にスルっと避けた。
「こ、この動きは・・・トキ!」
僕はT君の懐に入り手刀で斬りつけた。
「こ、これは・・・レイの拳!」
T君は段取り通りにうずくまる。
T君は立ち上がり
「この俺が恐怖を!
末弟のケンシロウごときに・・・
認めぬ。ましてや俺は北斗の長兄!
俺には後退はない。
あるのは前進勝利のみ!どあ~!」
T君は拳を繰り出し、僕はそれを避けて
「俺にも後退はない!は~~~!
ラオウ、今こそ野望果てる時!お~!」
ぷちぷちぷちっ!
ゴリマッチョなのでシャツのボタンが
気合を入れて胸を張ったら
見事に弾けて飛んだ。
(お母様に叱られる~。)
「いくぞ、ケンシロウ!ぬぉ~!」
T君はマジで拳を繰り出してきた。
まあ彼の拳のスピードは遅いので
避けるのは簡単。
僕は彼の拳を避けながら彼の身体に
拳を繰り出した。
T君は当てる気マンマンというか
僕が全て避けて彼の身体に寸止め
するのでムキになっていらっしゃる。
T君「ぬぉ~!ぬぉ~!」
僕「あたたたたたたたたた!」
5分位の攻防が続き、T君の拳の
スピードが遅くなってきている。
彼の限界に気付いたので止める為に
周囲にバレない様に拳が身体に届く
寸前で平手で突き飛ばした。
「あた~!!」
T君がヘトヘトだった事もあり
綺麗に吹っ飛んでくれた。
T君も限界を感じたらしく最後の
締めの台詞を語った。
「見事だ、弟よ。さらばだケンシロウ。
俺もまた天へ!トキの下へ帰ろう。
このラオウ天へ帰るに人の手は借りぬ!
我が生涯に一片の悔いなし!!」
T君胸のツボを突いて右腕を上げて
しばし塊り・・・The END
(長い台詞、お疲れ様です。)
周囲のクラスメイトが盛大に拍手
してくれた。結構ウケたみたいです。
僕はまずT君の無事を確認した。
「僕の拳はT君の身体に当たってない
よね?大丈夫だよね?」
T君「うん、大丈夫だよ。」
それからT君は握手を求めてきた。
ふと、T君の腕を見たらパンパンに
腫れ上がっていた。
「腕、大丈夫?」
どうやらT君の拳を避ける際に
僕の腕が触れて摩擦によって
沢山のミミズ腫れになってしまった
みたいです。何回か腕のツボを
突いたので、そこはクッキリと
指の跡が付いている。
「うん、大丈夫だよ。」
と握手した直後にT君の両腕から
血が流れ出てきた。
「大丈夫じゃないじゃん!
早く保健室に行こう。」
周囲も何人か気付いたらしく、
ちょっとした騒ぎになってしまった。
T君はその日は両腕とも包帯で
グルグル巻きにされて授業を受けて
いましたとさ。
僕の腕は無傷だった事もあり
人の触り方が解らなくなりました。
触る=怪我をさせる
遊びとはいえ人を傷つけてしまって、
あれ以来、トラウマになっている
みたいで、人に触れる事が一切
できなくなりましたとさ。
25歳からリーゼントの友達が増えて
から握手を求められる事が増えて、
握手だけはちょっとだけ慣れました。
抱きしめられると無意識に気絶して
しまうのは、人に触れないのが
原因かもしれませんね。