夕方、マーケット前のバス停に到着すると、買い物帰りの、あの年配男性客の姿がありました。80歳前後で、一人暮らしの小柄なおじいさんです。自宅は、2つ先の公民館前というバス停のすぐ近くです。ほぼ毎日、スーパーまで、行きは歩きで、帰りはバスに乗ります。
今日は、バスが来るまで待ちくたびれたのか、据え置き式のバス停の、低いコンクリート部分に腰を下ろしていました。バスを停車させ、乗車口を開けたのですが、おじいさんはなかなか乗りません。荷物もあるし、バスに乗って帰るはずなので左ミラーで確認すると、懸命に立とうとするのですが、つかまる場所がなく、立ち上がれない様子でした。すぐにバスを降りて行き、乗車することを確認し、おじいさんの腕を抱えて、ゆっくりと優先席まで案内しました。その間、おじいさんは「申し訳ない」と、「ありがとう」を何度も繰り返していました。
下車する公民館前に着くと、おじいさんは、いつものように立ち上がり、運転席まで普通に歩いてきました。私は、それを見て、ホッと安心しました。そして、すぐ横に来たおじいさんの顔を見て、驚いてしまいました。目に光るものがあったのです。涙を流していたんですね。老いて体を思うように動かせなくなってしまった情けなさ、つらさなのでしょうね。そして、「迷惑をかけて申し訳ない。ありがとう」と、また言います。私は、「少しも気にすることじゃないですからね。気をつけて、ゆっくり帰ってくださいね」と、声をかけました。
普段は、気難しそうで、声をかけにくいと思っていたおじいさんでした。失礼ながら、いつも、顔は怒っているような、苦虫をかんだような感じです。ですから、今まで私は、おじいさんと話をしたことがありませんでした。今日のことがあって思いました。おじいさん中味は、とても純情で、優しい方だったんですね。これからは、こちらから話しかけさせてもらいます。いつまでも元気でいてください。そして、いつまでも、買い物の帰りはバスを利用してくださいね。
