昼過ぎ、何人かのお客さんを乗せて、市役所通りを走っているときでした。シーンとしている中、突然、「ガラガラ、ガラガラ…、ペっ、ぺっー」という、うがい音が聞こえてきました。室内ミラーに目をやると、一番後ろに座っている、70歳代の年配男性客でした。ペットボトルの水を口に入れ、しきりにうがいをしています。うがいした水は、二重にしたレジ袋の中に吐き出していました。
驚きです。不衛生です。非常識過ぎます。すぐ前の男性客が、怒ったような顔になりました。バスが、信号で止まった時、私は運転席から顔を出し、両手の人差し指でバッテンを作り(迷惑になります、やめてください、お願いしますという気持ちで)頭を下げました。それを見た年配男性は、「えっ!、何?…」という顔をしただけで、わかってくれません。しかたなく今度は、声を出して「ほかのお客さんに迷惑ですから、(うがいを)やめてくださいね。」と言いました。するとまた、「えっ!、何を言ってるのか聞き取れない!」と…。耳が悪いのだろうか。少しイラっときましたが、そこは抑えて、マイクのスイッチを入れて同じことを言いました。やっと通じたようで、ブツブツ何か言ってはいましたが、うがいをやめてくれました。他のお客さんも、ホッとした表情になりました。
ところが、それだけでは終わりませんでした。その年配男性、うがいした水が入った袋を縛ると、体を傾け手を伸ばし、隣の席にそれを置いたのです。室内ミラーで見てしまいました。持ち帰らないつもりです。降りるバス停に到着し、様子を見ていたら、やっぱりレジ袋はそのままでした。運転席まで来たその年配男性に、「あそこに忘れ物してますよ」と、指をさして言いました。すると年配男性は、あわてて取りに戻り、小さくなって「スイマセン」とだけ言って、降りていきました。
終点に着いて、一部始終を見ていた顔なじみの男性客から、「バスの運転手も大変だよね」と、笑いながら言われてしまいました。苦笑するしかありませんでした。
