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 バスの中から、毎日のように見る光景で、驚き、感動し、そして教えられていることがあります。それは、半身不随の70歳代男性を、奥さんや、息子さん、娘さんが、毎日交代でリハビリ散歩している姿です。いつも決まった時間になると、駅前通りから港の公園まで往復2Kmくらいの距離を歩いています。

 

 その散歩の様子を初めて見る人は、大変に驚くことでしょう。一瞬、変な人たち? と思ってしまうはずです。半身不随の男性は家族と手をつなぎ、意図的に笑い顔を作り、手足を大きく高く上げ下げし、イチ、ニィ、イチ、二ィと声を合わせ元気に歩いていくのです。まず、そのオーバーな作り笑いの顔に、引いてしまうはずです。でも、それもリハビリなのです。ある本によると、箸をくわえ無理に笑顔を作るだけでも、脳内に幸福ホルモンが分泌され、ストレスが減り、前向きになれるんだそうです。さらに、脳が刺激され、表情筋も働くようになるんだとか。リハビリ家族さんたち、そういったことも計算に入れていたんでしょうか。

 

 リハビリ家族さんたちを、初めて見たのは、3年ほど前のことでした。当時、半身不随の男性は、右足を一歩前に出すのもやっとでした。右手も全く動かせませんでした。それに、顔に表情がありませんでした。それが、少しずつ回復し、今では、見違えるほどしっかりと、早く歩けるようになりました。そして、顔の筋肉も思うように、動かせるようになったのでしょう。今は、自然な笑顔です。リハビリ家族さんたちの、父親を励まし、根気強く続けている姿、素晴らしいですよね。父親も、それにしっかりと答えています。

 

 今日も、午前9時に営業所を出て、秋晴れの真っ青な空と海を左手に見て、港の交差点を右折すると、その先に、リハビリ家族さんたちの姿がありました。いつもと変わらず、笑顔で元気いっぱいです。バスの運転席から見えて感動するのは、きれいな景色ばかりではありません。人の心の温かさや、やさしさも見えます。そして、ほっこりした気持ちにさせてくれます。この仕事の良いところですね。