○月✕日 曇り
ある若い運転手の話です。
市内には、隣接する四つの市で運営する、K中央病院という、大きな病院があります。駅から六つ目のところにあります。平日は、国道を左折して、200mほど先の玄関前まで入っていくのですが、土休日は入っていきません。一つ手前で降りて、歩かなければなりません。![]()
その日は、日曜日でした。東京から来たらしい中年の女性が、病院に入らないことを知って、「東京ではありえない!! 平日は入るのに、おかしい…」と若い運転手に詰め寄ってきたらしいのです。
若い運転手は、事情を説明して、一つ手前と言っても、国道からわずかな距離であることを伝えたのですが、「東京では、絶対にありえない!!」と、まだご立腹です。![]()
若い運転手は、時間になり、ドアーを閉め発車しました。左バックミラーに目をやると、手を振りながら走ってくるお客さんが見えました。そして、バスを止め、ドアーを開けました。![]()
それを見ていた、あの中年の女性、今度は「東京のバスは、一度出たら止まらない」とぶつぶつ。たまりかねて運転手は、「ここは東京じゃない!!」と、強い口調で言ってしまいました。![]()
その女性も、よっぽど腹が立ったのでしょう。「このバス会社は、社員教育がなってない!!口の利き方が悪い、東京ではありえない」と言って、降りていったそうです。
そんな出来事を、若い運転手は、少し興奮気味に話していました。
私は、女性の病院に入らないことに対する苦情は、日頃から、そのとうりだと思っていました。土休日は、患者さんや、病院で働くお客さんは乗りませんが、お見舞いに行く方がたくさん乗ります。なかには、お年寄りや、体の不自由な方もいます。いつも、悪いなあと思ってしまうのです。![]()
それから、発車後、走ってくるお客さんが見えたので、バスを止めたことに対する苦情ですが、私たちは、支障がなければ止まります。地方のバスですから、一本逃すと、30分とか1時間以上後になってしまいます。行ってしまうわけにはいきません。
若い運転手のムカーっとしてしまった気持ちもわかります。私だって、話を聞いて「東京では」という枕詞に、違和感を感じました。しかし、運転手の「ここは東京じゃない」の一言が、いけません。
「すいませんね」などの、和らげる言葉や言い方、クッション言葉がなかったですね。バス運転手は、あくまでもサービス業です。もう少しこらえて、クッション言葉があったら、中年女性の、あの最後の一言はなかった気がします。若い運転手にそんなことを話しました。
病院の玄関前
