入社して一か月程の社内研修やら実地訓練が終わると、いよいよ一人立ちの日をむかえます。
三年前のその日は、H団地発K駅東口行きでした。

点呼、車両点検を終え、バス停につけ緊張してお客さんを待っていると
「お早ようございます、お願いします。」と礼儀正しい女子高生が乗ってきました。
彼女が記念すべき、お客さん第一号となりました。
市内にある県内有数の進学校の生徒で、背が高くショートヘヤーのかわいい女の子です。
三年間、毎朝同じ時間、同じバスに乗り一番前が指定席でした。

一言二言、言葉を交わすようになると、礼儀正しいだけでなく、芯のある、しっかりした考えを持った頭の良い生徒であることがすぐわかりました。一年生のころは子供っぽかった彼女も、二年生になると高校生らしくなり、三年生になるともうすっかり大人。子供の成長は素晴らしの一言です。他の運転手も、今どきの女子高生らしくない彼女をべた褒めでした。

センター試験も近くなったある夜、塾の帰りでK駅発の最終にハアハア言いながら、駆け込んできたことがありました。「がんばってるねー 。お疲れさまー。」と声をかけると「受験生ですからー。頑張ってまーす。」と嬉しそうに元気に答えていた顔が忘れられません。

そんな彼女も今年、大学に現役合格し卒業していきました。同僚によると、医学部に合格し、将来はがんの研究をしたいと話していたそうです。

彼女の長い人生の「高校生」という舞台に、バス運転手として登場した私。
転職したばかりの私の、記念すべきお客第一号として登場してくれた彼女。
バスは、いろんな人のいろんな人生を運ぶ、乗り物なんですね。
これからも、いろんな事がありそうです。