二月九日。みぞれ。 | 考えすぎ

二月九日。みぞれ。

二月九日。みぞれ。
初めて柄杓を使ってお点前させていただいた。

これは不立文字の世界。
語りえぬものについては沈黙しなければならない。
というか、沈黙するほかない。

でも、それでも、どうしてもしっかりと記銘しておきたい。
「言葉に頼りすぎるな」と
これまでにお叱りを受けたことも数知れないが、
忘れてしまうくらいなら叱られたほうがいい。

きっといずれ鮮度は落ちる。
感覚も、記憶も。
だからせめて、刻んでおきたいのだ。
この感覚が残っているあいだに。
たとえ再生できなくなるとしても、
この記憶が特別であるあいだに。

忘れえぬ光景と場面が、またひとつ増えた。
すごく疲れた。
この寒空の下、帰る場所があることに
感謝し尽くせない。

私も待てる者になりたい。
いつか、私も、待つ側になれるのだろうか。