「さて・・・・・・これより新年会を始める。
本年も気を引き締め、精進していこう。乾杯!」
「乾杯。」
「今年もよろしくお願いしまーす。」
「乾杯!」
「・・・・・・」
グビグビグビグビ・・・・・・ドンッ!!
「生ビール追加。」
「一気で行ったんすか!?」
「す、すげえ・・・・・・」
「後輩の前で一気はよせ・・・・・・」
「ビール程度なら問題ないだろう。」
「お待たせしました、生ビールです。」
グビグビグビグビ・・・・・・ドンッ!
「生ビールを。」
「す、すぐにお持ちします・・・・・・」
「面倒だ。一気に3杯分持ってきてくれ。」
「か、かしこまりました・・・・・・」
「店員が引いてたぞ・・・・・・」
「このくらいの量、居酒屋では珍しくもないだろう。」
「ロウガ先輩って結構飲むんですね・・・・・・」
「お前たちはロウガ先輩と飲むのは初めてか?」
「食事とか誘うこともありますけど
こっちから中々連絡が取れませんからね・・・・・・
メッセージ送っても反応してくれませんし。」
「読んではいるんだ。いいだろう。」
「反応してやらなきゃ
読んだかどうかすら分からないだろう。」
「基本既読スルーですからね、ロウガ先輩。」
「お前たちに対してだけではなく
基本的に反応してくれないからな。
俺がメッセージ送っても似たようなものだ。」
「だからいつも言ってるんだ。連絡くらい返してやれと。
全く直る気配はないがな・・・・・・」
ドンッ!!
「次は何にするか・・・・・・」
「そうこうしてるうちに追加分飲み終わってる!?」
「ロウガ先輩って酒強いんですか。」
「潰れてるところは見たことないな。」
「同じく。」
「そういう須藤先輩も潰れてる姿は見ませんね。」
「潰れないように意識してるだけだ。
ロウガと違って大量に飲めば潰れてしまうからな。
最初はビール。後は日本酒を少しずつ飲む程度だ。」
「最初はビールというのが風潮としてありますけど
俺は最初からハイボールですよ。これが好きですし。」
「酒の飲み方なんて人それぞれでいいだろう。
俺が最初の一杯目にビールを飲むのも
気にする相手と飲むときにしていた気遣いが
いつの間にか癖になっていただけの話。」
「ビールもハイボールも好きですけど
やっぱカクテルが一番飲みやすいんですよね。」
「お前の1杯目はカシオレだったな。
大友は・・・・・・飲めないんだったか?」
「二十歳になった時にビールで潰れたので
根本的にアルコールがダメなのかと。」
「一口飲んで五分後くらいに寝落ちしたもんな。」
「なんというか、見かけによらないものだな。
ぱっと見酒強そうな印象を受けるんだが。」
「追加のハイボール3杯です。」
「全てこちらだ。」
「先輩・・・・・・酒の許容量凄いですね。」
「程々にしとけよ・・・・・・
一気に飲むとアル中になるぞ。」
「依存症ではないから問題ないだろう。
こういう場でなければ酒も飲まないからな。」
「え・・・・・・・それだけ飲んでるのに
家とかだと飲まないんですか?」
「家では対戦相手や新カードの研究
商品プロモーションやティーチングの資料作成
頭を使う仕事が山積みだからな。
酒で判断力を損なうわけにはいかない。」
「企業契約してるプロファイターですもんね。」
「大型大会の出場に加えて
契約企業の商品プロモーションなども必要。
人によっては動画投稿サイトに出演もあるだろう。」
「家でも羽を伸ばす暇がないんですね・・・・・・」
「これくらいでちょうどいい。
こういった場は嫌いじゃないが
気を緩めすぎれば締め直すのに苦労するからな。」
「もう少し緩めてもいいとは思うが・・・・・・
こればかりは人それぞれというべきだろうな。」
「ご注文お伺いします。」
「塩だれキャベツ、たこわさ、よだれ鶏、
味噌串カツ10本、以下バター、だし巻き玉子、
砂肝ネギ塩炒め、手羽先、串揚げおまかせ10本セット、
ホルモンの酢もつ、ちくわ磯部揚げ。
あとこの大吟醸を燗で。」
「あ、自分も同じ大吟醸の燗を。
お前ら、飲み物の追加はどうする。」
「あ、ハイボールを。」
「ジントニック。」
「コーラお願いします。」
「以上で。」
「かしこまりました。」
「・・・・・・にしても一気に頼み過ぎだろう。」
「男5人だ。食えるだろう。」
「まぁ食えるが・・・・・・」
「・・・・・・去年までバタバタしてましたし
こういった息抜きの場があるのは嬉しいですね。」
「楽しかったですね、グリモワール杯!」
「だな!」
「お前たちは準優勝とベスト4だったからな。」
「残念ながら俺たちは決勝トーナメント進出だけで
終わってしまったわけだが・・・・・・」
「須藤先輩は予選を勝ち抜いた結果ですけど
俺は前回大会結果で予選免除。
そのうえでトーナメント1回戦負けですからね。
残念ながらほとんど出番がなかった。」
「傍目から見ても蛇島さんの執念を感じましたよ。
やっぱリベンジに燃える人ってのは強いですね。」
「そうだな・・・・・・だが俺も同じだ。」
「次やる時は負けねえぞ、ケイガ!」
「おー、怖。返り討ちにしてやるよ。」
「俺も、次はもっと高みに行かないとな。
後輩が上に行くのは喜ばしいが
俺もこの位置で満足できているわけじゃない。」
「俺も同じですよ。今度は優勝を。
そして出来るなら、蛇島さんへのリベンジを。」
「全員、結果に満足はしていないようだな。」
「・・・・・・はい!」
「すぐそこまで高みがあった。
でもそれを手にできなかったんです。
満足なんて出来ない。」
「いい戦績を残しに来ているわけじゃありません。」
「ああ。実力を競うトーナメントだ。
狙うべきは優勝一点・・・・・・!」
「それでいい。今須藤の言った通り。
狙うは優勝のみであるべきだ。
無論、今回の結果は全員悪くないと言える。
そこは卑下する必要も謙遜する必要もない。
だが満足するには値しない。
次こそは・・・・・・取るぞ!」
「はい!」
「次こそは頂点に・・・・・・!」
「お待たせしましたー。
こちら燗2本とハイボール、ジントニック、コーラです。」
「あぁ、はい。もらいます。」
「空いた食器はこっちに。」
「ありがとうございます。」
「お待たせしました塩だれキャベツとたこわさです。」
「よだれ鶏と味噌串カツ10本ですね。」
「こちらだし巻き玉子ですねー。」
「手羽先と砂肝ネギ塩炒めになりますー。」
「イカバターと串揚げ10本セットですねー。」
「ホルモンの酢もつですー。」
「一気に来ましたね・・・・・・」
「ひとまず決起はこれくらいにして・・・・・・食うぞ。
皿が多すぎてテーブルに余裕がない。」
「取り分は気にしなくていい。
好きなものを食べていけ。
欲しければ追加注文するだけだ。」
「っしゃあ!いただきまーす!!」
「オイ!だし巻き玉子一気に取るなよ!
俺も狙ってたっての!!」
「揚げ物と・・・・・・塩だれキャベツか。
揚げ物と野菜っていいですよね・・・・・・」
「ああ。永久機関みたいなものだからな。
・・・・・・で、これだけ頼んだ本人は
たこわさ食べてるだけか。」
「脂っこいものはそこまで好きになれん。」
「じゃあなんで揚げ物20本も頼んだんだ・・・・・・」
「・・・・・・」
「武田?何か注文するのはいいが
とりあえず今ある料理をある程度片付けないか?」
「あぁいや、追加とかではなく価格の確認を・・・・・・」
「気にするな。今日は俺が出す。」
「俺達が、な。お前にだけ払わせたら
俺の先輩としてのメンツが丸つぶれだろうが。」
「・・・・・・俺は構わないが。
だがお前はまだ院生だろう。懐はいいのか?」
「研究の傍らで稼いでるから問題ない。」
「須藤先輩は今大学院生でしたっけ?」
「ああ。と言っても修論も終わったし
4月になったら働き始めるよ。」
「・・・・・・働く場所は決まったのか?」
「ああ。近くの公立高校に。非常勤だがな。」
「そういや君らって今いくつだっけ?」
「24」
「23(3月30日生)」
「俺も23ですね。既に働いています。」
「俺とモトチカが22ですね。
4月から社会人です。」
「成程。プロフ直しとこ。」
「・・・・・・なんでいる?」
「年齢曖昧になってから一応固定させとこうかと。
失礼しましたー。」
「・・・・・・・」
「どうした?」
「あの人串カツ一本持っていきましたよ。」
「せこっ・・・・・・」
「まぁ・・・・・・必要なら追加すればいいさ。」
「グリモワール杯の運営報酬としてくれてやる。」
「だとしたら・・・・・・相当割に合わない気が」
「ひとまず、飲み食いを再開しよう。
まだテーブルの上に料理は大量に残ってる。」
「じゃあ串揚げ2本くらいもらいます。」
「あ、武田先輩。砂肝炒めの皿取ってもらえます?」
「大皿移動させるスペースがないだろう。
取ってやるから、お前の取り皿貸せ。」
「お願いします!」
「揚げ物は手伝わらなくていいから
せめて塩だれキャベツとかは手伝ってくれ。」
「・・・・・・やれやれ。」
「お前が注文したんだろうが・・・・・・・」
***
「おーい、俺が取った串カツ
あんまり味噌ダレかかってねえよ。
外れ引いたなー・・・・・・」