★勝手に新連載★放浪ママ

放浪ママ

現在、40歳を目前にして、東京に暮らしている。
会社勤めをしていて、月給は22万。
築50年近い木造アパートに住み、
テレビは朝晩のニュース番組くらいしか見ない。

こんな生活をして5年が経とうとしている。

離婚した元夫と、子供たちとは交流がある。
就職したころ知り合った恋人もいる。
勤めている会社内に、定期的に会って
ホテルに行く人がいる。

女友達は皆無だ。
地方の同級生からSNSで連絡が入ることもあるが、
雑談が煩わしくて連絡を絶ってしまっている。

離婚が成立するまでは東北の実家にいて、
就職をするために東京に戻った。
結婚していたころは、東京に住んでいた。
就職しようとまた東京に戻った。
就職するまでは高円寺のシェアハウスにいた。

就職が決まったころ、
暇で登録した出会い系サイトで出会ったのが
現在の恋人で、9歳年上の会社員である。
知り合ってから現在まで、大変仲が良い。
週に一度、仕事帰りに会って食事をし、
酒を飲む。

たいていはそれでおしまいだ。

彼は、離婚した元奥さんの面倒を見ている。
精神疾患があり、親類も引き取りたがらない。
経済的な自立も難しい。彼女は、
外国人専門の出会い系サイトに登録して、
外国人の彼氏を探しているらしい。

彼との結婚は、とうの昔にあきらめた。
もし、今度また結婚するなら、彼だと
思っているが、
また、それ以外の人と結婚するのであれば、
面倒くさくてたまらないと思うが、
当分その見込みはない。

あと20年も経って、
それでも何かの縁があれば、
一緒になれるかもしれない、という
くらいの感慨だ。

今私は、虚無感に支配されている。
自分だけのために生きてきた報いかもしれない。

しかし、私はいわゆる
「恋多き女」というのでもないし、
そう性欲が強い方でもないと思う。

世の中にも、他人にも興味がない。
自分自身にさえ興味がない。

専業主婦もだめ、会社員もだめとなると、
残すところはフリーランスかとも思うが、
独立するだけの気概もない。

惰性で生きてきた。

このところ、仕事が落ち着いているので、
ますます怠惰になっている。

資格取得しようという志もないし、
将来の展望もない。

年を取り、衰え、
年老いた両親の面倒を見、
自分も病気になり死んでいくだけだと
思うと、未来のことを考える気もしない。

とはいえ、割と能天気に暮らしている。
いい気なものだ。

内向的なほうなので、
人と会うと疲れてしまう。
音にも敏感だ。
人も、音も、情報も、物も、
多いとパニックになる。

一人でいるのが好きだ。

今日は調整のために平日の休みと
なったので、暇つぶしに半生記を
書いている。

死ぬときに苦しみたくない。
いつの頃からか、これだけが望みだ。
親類が癌で亡くなった人ばかりなので、
皆苦しむのを見てきたからだ。

とはいえ、
現在では、若くして癌になることも
珍しい事ではない。
発見の精度も上がっているのだろうし、
そもそも、寿命まで生存すると、
人は癌になる生き物だという話もある。

それだけしか望みがない。

もしも宝くじに当選したら、
5臆や10億という大金が手に入ったのなら、
私は引きこもりになるだろう。

欲しい物も、行きたい場所も、
見たいものも、
私には、何もない。

世界の最先端都市にいて、
この体たらくである。

何ともったいないことかとも思うが、
もっと積極的に楽しんでもよさそうな
ものなのだが、
漫然と日を過ごしている。

本や漫画を読むことだけが、
唯一の楽しみだ。

最近は、食べるのも億劫になって
しまった。

若い頃はまだ、食い意地や、
睡眠欲が旺盛だったから、
やけ食いをしてふて寝していれば、
日々をやり過ごすこともできた。

今は、食欲も落ち、煙草と酒の
せいか、食事量も減り、
睡眠時間を確保しようと思っても、
早朝に目が覚めてしまう。

老人のようだ。