カイロの街のジューススタンド | ぶらり旅S

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戦後すぐの生まれ。灌漑、水資源、農業、発展途上国への技術協力などを中心に、大学で研究、教育をしてきて、現役を退きました。研究の周辺で、これまで経験したこと、考えたことを、今考えていることも含めて書いてみたい。

カイロの街のジューススタンド

Enjoying juices on the streets in Cairo

 

 

暑いカイロの街を歩いていてうれしいのは、ジューススタンドがそこかしこにあることである。オレンジジュースは日本でも定番として、マンゴー、パイナップル、バナナ、ザクロ、グアバ、それにサトウキビなど、多種多様な果物があって、注文すると目の前で作ってくれる。ジュースは、大きめの分厚いガラスのコップに入れて出してくれる。

 

(カイロ、ドッキ地区の伝統的なジューススタンド。店の前に価格表がかかっている。メニューの数がすごい。ミキサーがいくつか並んでいる日本の通りやショッピングセンターにあるジュース屋さんとはずいぶん違う。)

 

 

(店頭に並んだ果物。)

 

 

(これは小サイズのカップ。これにマンゴージュースをなみなみ注いでくれる。日本人にはこれで十分。ガラスのコップで出す店が多いが、このように、店の名前が入ったプラスチックのカップも使われ始めている。)

 

大体、主人と思われるおじさんが店の前の通りか店の一番奥に座っていて、そこで、果物の種類と、物によって大か小かを伝え、料金を払う。すると、小さな紙切れをくれるので、それをカウンターの向こうのお兄ちゃんに渡せばよい。この会計台のおじさんは、どういうわけか、どの店でもブスッとしている。おじさんにアラビア語で果物の名前を伝えるのはちょっと難しいが、相手だって、なにせ、何かを飲みたいから店に入ってきたことを知っている訳だし、英語だってなんとかなる。

 

海外を旅していて、現地の人から質問されたとき、困るのは、何を聞かれているかがわからないことだ。多少わかる英語でも、そんなときは聞き取れない。でも、ジューススタンドのように、大小どちらにするかと聞かれることがわかっていれば、あとはジェスチャーでも何とかなる。大きい、小さい、は基本単語なので、少し現地にいれば覚える。アラビア語では、それぞれケビールとソガイヤール(私の耳には)だが、私の発音では通じない可能性もあるので、大体、身振り付きで答える。すると、おじさんの難しそうな顔に、突然、人なつこい笑みが浮かんだりする。

 

一度、どうしようもなかったのは、別の店で買い物をしてお金を払おうとしたら、ハゲタニ?と言われた時だ。ハゲなんていう音を突然聞いて、それに頭が反応してしまい、えっ、えっ、と言うばかりだったが、そのうち向こうがあきらめて、お金を受け取った。あとで、現地在住の日本人に聞いたら、タニは、別の、という意味だそうで、「他のものはいいですか」という意味だった。そんなこともあるが、それはそれで後になれば楽しい経験である。

 

私がジューススタンドで飲む一番は、マンゴー(現地ではマンガ)だ。これがエジプトはどの店でもとびきり甘い。もちろん100%果実で、果肉をつぶしただけ、どろどろしていておなかにドスンと来るような感じである。私は、小さいカップで十分だ。ただ、マンゴーだけは、事前に造ってあって、ピッチャーから注いでくれる。マンゴーの果実を取り出すのが手間だからだろう。

 

グアバジュースも最高だ。そういえば、日本ではほとんど見ない。子供の頃、コカコーラが日本に入ってきた時、ハワイのグアバジュースというのも入ってきたが、人気は出なかった。少しピンク色で、水状で、砂糖で甘みを付けたジュースとは言えないような代物だったから当然。これで、日本人のこのジュースに対する評価が定着してしまったのではないか。グアバに申し訳ない。しかし、エジプトの、甘すぎず、さわやかな香りのどろっとした100%果肉ジュース(もちろん、種を取り除くなんてことはしない)は、日本に輸出したら当たることは間違いない。ちなみに、生という訳にはいかないものの、スーパーで売っている瓶入り100%グアバジュースは、我が家へのお土産の必須アイテムになっている。

 

ちょっと軽く、さっぱりと行きたいときはオレンジジュースだ。オレンジは目の前で半分に切って搾ってくれる。大体、3-4個を使う。こちらの方は全体に甘さは控えめで、さわやかな飲み口だ。季節によるが、ザクロをジュースで飲むこともできる。エジプトのザクロは、日本では見かけないような大きなもので、ソフトボールくらいの奴だ。中の粒も大きい。種ごとミキサーにかけるので、種が中に残っているが、こんな贅沢なものは日本では飲めない。

 

サトウキビジュースはエジプト人には人気だ。若いカップルがなかよく飲んでいるのをよく見る。これはサトウキビ(細長い竹のような感じ)をシンプルな歯車のような機械に通してクラッシュして絞り出す。そんな、とてもジューシーに見えない茎から絞るので、大量の絞りかすが出る。ほとんどのジューススタンドの床にはそれが敷いてある。少々滑るのが難点だが、みんな好むようだ。

 

この手のジューススタンドには、フルーツポンチのような、少し手をかけた商品が冷蔵ショーケースにはいっていることもある。

 

 ジュースの値段は、もちろん果物によって多少ことなるが、普通、日本円で30円から50円程度と、大変やすい。お金の勘定は難しいが、適当にお金を渡せば、勝手にとっておつりをくれる。日本人にとって、エジプトの男の人の顔は威厳があり、ひげを生やして怖そうに見えるのだが、みんな正直で、正確におつりをくれるので安心してよい。

 

 観光ででも、カイロなど、エジプトの街を歩いたときは、是非ジューススタンドに立ち寄ってみてはどうだろう。