勢いで書き始めたブログだが気が付けば100回に到達、ここまで続くとは考えてもみなかった。実際もう殆ど書くことが無い、所謂ネタ切れ

 

5月6日大型連休最終日、鯖江市文化センターでの大阪桐蔭吹奏楽部の演奏会に行ってきた。昨年もこの時期に北陸公演でこのセンターに来ていたのを後で知って悔しい思いを持った。

「死ぬまでに1度だけ聴いてみたい」

一か月ほど前にここで母校の定期演奏会があり、その時知った。暫く音信不通であった旧友を誘うか逡巡して申し込みが少し遅れた。チケットぴあで2枚注文すると売り切れ、試しに1枚でトライすると買えた!!最後の1枚だった(キャンセル待ちというのがありもう1枚も手に入った)

 

開演の30分前に到着、入り口に「完売 当日券無し」を掲げた方の前を通り過ぎて中に入る。意外にも切符切りとパンフレット配布の4人がいるだけでロビーは閑散としている。少し早いが取り合えず座席確保とホールに入ると人、人、人!!空席が殆どない、かろうじて前から4列目に座ることが出来た。ステージをみると後方に3列のひな壇、左手にはハープがなんと2台

 

客席を見回すと平均年齢が若い、20歳を切っているのではないか。後で知ったがやはり中高生で吹奏楽をやっている生徒達が多く梅田先生が「今度一緒にやろうよ」と声をかけていた。これが桐蔭スタイルの演奏会。通常は部員が続々と入場、コンマスの音に合わせての音出し、静かになったところで指揮者が出てきて演奏そして司会者が登場・・・・・となるはずだが全く違う。

 

開演前に梅田先生がが出てきて丸椅子に座りながらなんとなく話を始める、まあ世間話みたいな物。

時間になると次々と部員が整列していく、恐らく170人位でステージが少し狭いのかチューバ隊はステージ下に陣取り両袖にも並んでいる。

 

腕時計を見て「じゃあ やろうか」で始まった。最後までこのスタイル、所謂演奏前の緊張感みたいな物は一切ない。しかし演奏が始まると

 

第一部 

まずオープニングマーチングステージという事でスターウオーズ、キャラバンの到着、松田聖子メドレーと続く。

大阪桐蔭はマーチングコンテストからから離れて座奏に注力していると思っていたがとんだ勘違い。勿論橘のような複雑なステップは無いが狭いステージ上で巧みなフォーメーションを展開している。特記すべきは後方の大スクリーンでここにその曲に合わせた映像が次々に流れていく、合唱になるとその歌詞が流れてくる。

ミュージカル「ローマを訪ねて」

ローマの祭りの第一楽章をメインにしてローマに関係のある曲を組み合わせながらローマの歴史を追いかけていく。舞台中央ではカエサル暗殺事件やアウグストス、クレオパトラが登場し途中合唱を交えながら第4楽章の華やかなフィナーレを迎える。

ミュージカル「サウンドオブミュージック」

名曲ぞろいのミュージカルだがほぼすべての曲が入っていた。当然スクリーンにはオーストリアの景色が流れている。マリア役には可愛い女子部員、歌声もきれいだった。演技もオリジナルをしっかりと取り入れている、振り付けには宝塚でトップスターだった方がされているそうだ。さすがにこれは高校生の手に余るところ、でも演劇部がやっていたと言われても驚かなかったと思う。

終わって一言「凄いね」他の言葉が浮かばない。

 

10分の休憩で第2部へ

 

第2部

ミュージカル「オペラ座の怪人」

残念ながら有名な1部分を除いて中身を知らないのだが特筆すべきは男性役の一人、ハイバリトンの歌唱力は「声楽科かいな?」と勘違いしてしまう、相手役の声が細くて少し可哀そう。

歌やダンス、合唱などを織り込みながらそれらに合わせて後方のベルが一斉に上下左右に展開する。各パートも前面に次々と出てきて混然一体となって壮大なドラマが完結する。

 

ずっとそうだったが、「ブラボー」などの声はかからず静かな温かい拍手だけが続いた。これは鯖江市という土地柄なのかそれとも大阪桐蔭が持つ特殊性なのか?

 

この後椅子と分厚い楽譜を持って初めて座奏体制となる。

「Mrs.GREEN APPLEメドレー」を演奏する中央大スクリーンには19年の歩みが書かれた文字が演奏風景と共に流れていく。年を経るごとに年間行事の数が増えてくる。去年は特に注目して見た。2日連続は当たり前、3日や4日連続もある。年間出演回数は160とか180とか言っていたのがこれだ、いくら吹奏楽コースとがいえ勉強は?

 

この後甲子園応援コーナーとリクエストコーナー。これが出来るのは多分大阪桐蔭だけだ。

折り返し2枚だけの簡単なパンフレットの最後のページに60曲の名前が番号順に書かれている。この他に甲子園応援曲が30曲。最初に応援曲を演奏後梅田先生がプラスチック製のボールとバットで球を打つ。受け止めた人が番号を言ってリクエストする。最初は60番ジブリメドレーだったが、先生老眼で楽譜が見つからない。楽譜担当の部員が出てきて探す。

「おい、ここか?3拍子だったよな?」

不安なスタートだったが始まればそこは桐蔭。次は舞台に観客を呼んで応援曲を選んでもらう。

お名前は?はい、では〇〇さんで良いですね。

「アフリカンシンフォニーかー、うちこれ苦手なんやけど」と言いながら演奏する、最後は得意の応援だ。「かっせかっせ○○・・・・」が終わったら○○さんがボールを打ちかえす。これを3人位やって時計を見ながら「これで終わりにします」銀河鉄道999で締めくくった。

 

10分の休憩を入れて2時間半圧巻のパフォーマンス、最後まで熱狂は無くても十分な満足感に溢れている。私が常に橘に不満を抱いているのがこの点だ、橘の金沢公演は15分の休憩を入れて1時間だった(1500円)

梅田先生曰く

「6月8日に大フィルの公演があるけどチケット売れてないみたいです。是非行ってください、でもちょっと高いですね、うちは2000円お得でしょう?」

 

今年も練習風景の動画がアップされた

 

音作りについて勘違いしていた。三角やひし形を横方向と思っていたが縦方向だった。しかしやはり倍音、倍音である。その為には上級生の話を聞き全体の音が作り出す倍音を聴くこと、これを続けることにより特有の桐蔭サウンドが出来上がる。

 

大阪桐蔭といえば「美爆音」と言う言葉が出てくるがこれはマスコミが作った言葉だ。どなたかが一番美しい音が出るのはmfと言っていた。fffは爆音だが美しくない、恐らく倍音列の重なった豊かなサウンドを大きな音と勘違いしたのだろう。事実最前列で聞いていても爆音を聞いていないし美爆音という言葉すら忘れていた。

 

ハイフェッツを思い出した、稀代の名バイオリニスト。その名盤を聴いた時の事、古びたオーケストラの演奏の後に突然時代を超えた素晴らしい音色が飛び出してきた、流石天才。しかしこの手の名手は楽団には不要であり、ひたすら音を聴き音を奏でる作業を繰り返すことで〇〇サウンドと言うものが出来上がる。これはプロ、アマ変わらないと思う。

 

今回の北陸遠征の案内を見つけた時から?が頭の中に浮かんでいた。三日間の公演で毎日演目が異なるしかもミュージカル。座奏なら不思議ではないかもしれない、しかしミュージカルは・・

 

ロームでの様子が分かる。

ミュージカルの演目は異なるが明らかに人数は増えているしパフォーマンスも向上している、つまり日々進化している。

 

?の前提そのものが間違っていた。通常新年度になればまず考えるのが今年は何を演奏するか、という事だと思う。橘はパレード曲は決まったがまだまだ練習不足、ステージでは去年のものを使っている(はず)

 

大阪桐蔭は全く違う、この時期に京都橘が1年間かけた作り上げた定期演奏会のレベルに達しているではないか、この違いは何だろう。

レパートリーとして200曲近いものを持っていて毎年多少の入れ替えをしているに違いない。公演の度に曲を選び1年生は新曲として覚え上級生は教えることで記憶を確かなものにしていく。あの膨大な公演回数とレパートリーの数にはそういう関係があるはずだ。この意味で大阪桐蔭も異端の存在と言ってよい。橘は見える形で大阪桐蔭は見えない所で異端なのだ。

 

吹奏楽のエリート集団だからこそ可能なのだろう、新入生は大変だと思うけれど。

今年の1年生を立たせて近くのフルート女子に訊ねる。

「入ってどうお?」

「楽しいです」照れながら笑顔で答える

嘘ではないだろう、「しごき」や所謂「厳しい上下関係」の世界からあの音楽は生まれない。秘密の練習方法があるに違いない?

 

今回の公演でも縦のずれやステップの間違い等は幾度も見られたがそんなことは全く気にならなかった。逆に完璧ならば化け物集団になってしまうではないか。高校生頑張っているね、の気持ちが強くなる。

 

橘ファンなので可能ならば何度でも橘の演奏会には行きたい

でも大阪桐蔭も・・・もう一回・・・

 

ともかく圧倒的な高校生達のエネルギーを浴びて久しぶりにリフレッシュした気分だ。

 

ついつい書きすぎてしまった、それだけ衝撃が大きかったのかもしれない。

あの時の京都橘定期演奏会のように・・