ALS記

ALS記

2023年2月13日に診断されて、現在進行中。とりあえず仕事は続けています。進行がとても遅い症例のようで、その状況を記録して発信していこうと考えています。

 万世の排骨麺をもう食べれなくなって悲しみにくれる中「次を探そう」と気を取り直して、近所にある『揚州商人』へ。前から排骨麺があるのは知っていたが、どうせ食べるなら万世とスルーしていた。

 

 

 ということで頼んでみたのだが……。外がカリッとしているところは合格なのだが、いかんせん肉の旨味が薄い。万世の排骨は、噛むとぎゅっと圧縮された旨味が口に広がる至福感があったのだが、これはちょっと足りない。「豚肉だな」という感じが出てしまう。まずい訳ではなく、それなりに排骨感はあるのだけれど。何だろうなあ、あの旨味。

 

 同じく万世排骨のしもべである妻によると、復活話もあるらしい。そうなったら行列に並んででも食べようと思った。ラーメンも行列もそんなに好きではないが、こればっかりはやむを得ない。旅はまだ続く。

 急遽モバイルルータが必要になったので昨日秋葉原に行ってきた。さすがに暑くて、歩行者天国なんだけど道路を歩いている人が少ないという状況だった。前回行った時に、SIMフリーのルータがワゴンでぐちゃっと売っていた店に行ったものの、全然見当たらず。店員に訊くと「もうないですね。ある時に買っておかないと」という、秋葉定番の台詞を頂戴する。諦めきれず、駅前に最近できたところを最後に覗いてみたところ、前に買えなかった機種がひょっこり見つかるという秋葉っぽい逆転劇があってホクホクだった。

 

 のだけれど。満を持していよいよ訪れた『肉の万世』が、何と閉店していた……。遠目にどうも妙だなと思っていた万世ビル自体が閉鎖されていて、慌ててネットで検索したら3月に全店閉店とのこと。焼き肉と洋食系は他のビルに移ったのだが、排骨麺を提供してくれていた万世酒場は、跡形もなかった。

 

 

 「万世がなくなる筈がない」と高を括った結果である。この万世の先にあった、ホットケーキが絶品の『万惣』が、ある時訪れたらもぬけの殻で、ビル老朽化でなくなっていた時を思い出した。甘いものが苦手な私でも嵌ったホットケーキだっただけに、この時も強烈な喪失感があったが、今回の方がちょっと深刻かもしれない。

 

 

 画像フォルダを漁ったら、在りし日の排骨麺が出てきた。ピリッと辛いネギが添えられたバージョン。太麺の上にどーんと乗った排骨は、外もパリッとしていて噛み締めた時の旨味がスープと絶妙に合っていた。今回食べ納めで行ったら、胃もたれ覚悟でダブル排骨を頼むつもりだったのに。

 

 万世ビルには、さっき書いた焼肉店のほか、ステーキがうまい洋食店、かつサンドを売っている土産物店も入っていた。そして地下には何故か中華料理店があって、そこの名物が排骨麺だった。秋葉原に行ってブツを買い込んだら、排骨麺を頼みつつ、割と空いている広い店内でゴソゴソと広げるのが定番だった。しかし売上がよくなかったようで、ビルの裏側にできた一杯飲み屋のサブメニューになってしまった。カウンターだけの狭い場所になってしまい寛げなくはなったけれど、時折どうしても食べたくなって利用はしていた。とてもとても残念。

 

 こうなると、食べ納めの残り2店の存続も心配になってきた。ちょっと急ぎたい。

 これは神経質になり過ぎなのかなと思いつつ。仕事相手に「ALSになっちゃって」と伝えると一部の方がおっしゃる「治療に専念して下さい」とか「ご無理をなさらないように」という挨拶があって、これに対して違和感を感じてしまう。

 

「進行が遅くてよかった」と言ってくれるのはそんなに気にならないんだけど、「早く治るように治療に専念して」と言われても「治療って……治らないんだよなあ」というのが実感で、むしろ身体が動かなくなる前にあれこれ片付けなきゃいけない訳で。無理をしてでもマイルストーンを進めたいのが本音だったりする。「ご無理」したい。

 

 まあこういうこともALSについての知識がないと判らないし、仕事相手にそこまで手間をかけていられず通り一遍の気遣いをしてくれているんだろうと思う。性格にもよるとは思うけど「ALS」と言われて調べてくれる方はありがたい存在なんだろう。まあ逆に私が言われたとして「身体が動くうちに生き急いで」とは言えないかなあとも思う。

 

 色々難しい病気だなあと思うものの、延命措置を選択できたり、ALS-Dにならない限りは意識・判断が明瞭であるというのは利点だと思っている。認知機能が曖昧なまま、ずっと生かされるよりはマシかなと。そこは運命に感謝したい。