扉に手を添えた

 

君に会うために

 

そこに君はいるだろうか

 

いくつも先に行ってしまった君は

 

まだそこにいてくれるだろうか

 

時計の針に耐えられなくて逃げ出した僕を

 

2人の針を大事に歩み続けようとした決めた君は

 

どう思っているのだろう

 

「それはズルいよ」

 

前に君が目を細めそっと笑って言った

 

その言葉の意味が分からないまま

 

さらに道は違えていった

 

今はわかる

 

僕はずっと臆病だった

 

引き出しが増えるほどに

 

傷つくこと転ぶことが目に見えて

 

君に歩み寄ることすら怖くなった

 

この3年

 

自分を見つめるのに怯えて

 

君を避け続けたのに

 

目を閉じ耳をすませば

 

聞こえてくるのは君の声

 

僕の内側から鮮明に快活に

 

陰ることのない記憶

 

君は僕の真ん中でいつだってあたたかかった

 

笑顔も泣き顔も

 

全ての表情を覚えている

 

怒った時に涙目になるのも

 

嘘をついたときに斜め上を見るのも

 

自分の親指を上に手を繋ぎたがるのも

 

一つ一つ心に刻まれている

 

眩しくて眩しくて

 

遠ざけてしまったのに

 

僕は君から離れられないらしい

 

扉を開くことをためらってしまう

 

最悪の予想も見なければ絶対に現実にならない

 

でも僕は君に会いに来た

 

これだけは怖がりたくないから

 

息を止めて扉を開けた途端

 

風が吹いて

 

太陽の香りがした