何とも不可解な事件だ。

 

 写真の男は今、神奈川県の相川町界隈を始めとして県内の住民達を不安に陥れている小林誠容疑者(43)だが、私が不可解に思っているのは、実刑が確定したのに2月以来この男が娑婆でノウノウと暮らし続け、身柄を確保しに警察官や検察官らが自宅に訪れたのが6月だったと言う事だ。

 

 しかも今回逃走して神奈川県警が全国に指名手配した容疑が公務執行妨害の容疑だと言うから呆れてしまう。

 

 繰り返しになるが、この小林容疑者は2月に窃盗や傷害、覚醒剤取締法違反などの罪で懲役3年8ヶ月の実刑が確定していたのに横浜地検の出頭命令に応じなかった。

 しかも、検察官が何度か自宅を訪問したが逢えなかった・・という理由で4ヶ月余りも放っておいたのだ。

 

 何をやってるんだ!?と、私ばかりで無く地元で不安に思っている人も、全国でこのニュースを知った人も、多くの日本人はそう思っているはずだ。

 

 神奈川の警察や横浜の地検の人間達はそこまでブッ弛んでいるのか!?と。

 

 しかも今回の逃走劇は、私服の刑事が二人に、地検から5人もの人間が身柄確保の為に小林容疑者宅を訪れて室内に入っておきながら、相手が包丁を振り回したからという理由で逃走を許しているのだ。

 

 何をやってるんだ!?としか言いようが無いだろう。

 

 更に問題なのは小林容疑者を取り逃がしてから3時間以上も経って漸く事実関係を公表するという不手際な対応をとっていることだ。

 私はニュース番組やワイドショーの事件もの番組などを長いこと担当していたので思わず、<また、神奈川県警か!?>と心の中で呟いていた。

 

 と言うのも、過去を振り返れば昭和から平成にかけて神奈川県警管内の不祥事は実に数多く発生していたのだ。

 重要事件の不祥事なども続き警察庁も県警の体質改善に手を付けてきた筈だった。

 

 にもかかわらず、今回の不祥事だ。

 

 今回の事件は神奈川県警と言うよりも横浜地検の担当者らの不手際による責任が重いが、本質的な問題は、窃盗や傷害や覚醒剤取締法違反を繰り返している犯罪者を保釈にしている裁判所の対応が最も責任が重いのでは無いかと思う。

 

 産経新聞が裁判所判断の問題点を記事にしているので以下にご紹介する。

 

 

 

(産経新聞 2019年6月20日 22時5分)

『窃盗罪などで実刑が確定し、横浜地検が収容しようとして神奈川県愛川町の自宅から逃走した小林誠容疑者(43)について、横浜地検は20日、公務執行妨害容疑で逮捕状を取り、県警が全国に指名手配した。

 

 小林容疑者は過去にも複数の事件で実刑判決を受けており、今回の事件は逃走を許した検察当局の失態とともに、裁判所の保釈判断が適切だったのかも問われる。

 過去10年で保釈を許可する割合(保釈率)が急増するなど、裁判所が容疑者や被告の身柄拘束を解く判断基準を緩和する動きを強めていることに対し、捜査当局から逃走や再犯のリスクが再三、指摘されてきたためだ。(大竹直樹)

 

■複数回の実刑判決

 

 関係者によると、小林容疑者は過去にも、傷害致死や強姦(ごうかん)致傷、監禁致傷、覚せい剤取締法違反、窃盗などの罪で複数回、実刑判決を受けていた。

 

 刑事訴訟法は被告らから保釈請求があった場合、証拠隠滅の恐れがある場合などを除き保釈を認めなければならないと規定。「権利保釈」と呼ばれるが、小林容疑者は常習として長期3年以上の懲役または禁錮に当たる罪を犯しており、例外として保釈は認められない。ただ、健康状態や裁判準備など被告の不利益の程度を考慮して裁判官の裁量で保釈を認めることができ、今回は、この「裁量保釈」で認められていた。

 

 数多くの犯歴などを理由に検察側は保釈に反対していた。それだけに、ある検察幹部は「被告に逃げられた全責任は検察にある」としつつも「何度も実刑判決を受け、逃走や再犯の恐れが極めて高い被告の保釈を許可した裁判所の判断には疑問がある」と話す。

 

 一方、元東京高裁部総括判事の門野博弁護士は「保釈にあたって裁判官は諸々の要素を考えて判断している。再犯防止は保釈を認めない要件に入っておらず、一般的な治安維持の観点で保釈制度を考えるのは良くない」との見方を示す。

 

 元検事の高井康行弁護士は「保釈保証金を納付させ、逃亡するなどした場合に没収することで逃亡を防ぐとの考えだが、最近は逃走したり、再犯に及んだりするケースが増えており、従来の考え方が通用しなくなっている」と指摘する。

 

■殺人罪で実刑でも

 

 保釈の運用が変化する契機となったのが平成18年6月。当時、大阪地裁部総括判事だった京都大大学院法学研究科の松本芳希教授が法律雑誌に発表した論文だ。証拠隠滅の現実的、具体的可能性があるかを検討すべきだと指摘、否認や黙秘をただちに「証拠隠滅の恐れ」と結びつけることを戒めた。この考えが裁判官の間で広まったとされる。

 

 全国の地裁、簡裁が保釈を許可する割合は20年の14・4%から29年には31・3%と10年間で倍増。今年3月には東京地裁が、殺人罪で懲役11年の実刑判決を受けた被告の保釈も認めた。東京高裁が許可しなかったが、検察内では衝撃を持って受け止められた。

 

 4月には、会社法違反罪に問われた日産自動車前会長のカルロス・ゴーン被告(65)について、東京地裁が証拠隠滅の恐れを認めながら保釈を許可。身柄拘束を解く判断基準緩和の流れは加速している。

 

■相次ぐ保釈中の逃走

 

 一方で保釈中の逃走は後を絶たない。

 

 29年6月には盗撮事件の判決公判で、保釈中の男が仙台地裁の法廷で警察官に切りつけ、逃げようとした事件が発生。昨年2月には千葉県館山市で、覚せい剤取締法違反罪に問われ、保釈が取り消された男を函館地検の職員が収監しようとした際に逃走する事件も起きている。

 

 勾留中の容疑者や被告、服役中の受刑者が逃走した場合、逃走罪に問われるが、保釈中の逃走には適用されない。高井弁護士は「今の制度では、保釈中に収監のための出頭要請に応じなかったり、単に逃げたりしただけでは処罰ができない。今後は、逃走防止のために、これらの場合でも処罰できるようにすることも検討すべきだ」と語る。

 

 ある検察関係者は「収監する際に抵抗されるケースは少なくない。裁判所は逃亡の恐れを慎重に吟味してほしい」と強調した』

 

 

 

 上記の記事で分かると思うが、裁判所の裁判官がこの10年で保釈にする犯罪者をにしているという驚くべき事実だ。

 しかも、元判事で今は弁護士をしている門野博弁護士の見方ー

 

「保釈にあたって裁判官は諸々の要素を考えて判断している。再犯防止は保釈を認めない要件に入っておらず、一般的な治安維持の観点で保釈制度を考えるのは良くない」

 

 ーは、平和に暮らす一般市民の人権を無視しているのでは無いかとさえ思う。

 

 <再犯防止を保釈を認めない用件に入れていない>という言葉には私だけで無く、多くの人が呆れたことだろう。

 保釈を認める容疑者が過去に繰り返し凶悪な事件を起こし、今回も保釈した後で再犯する可能性があると検察が反対しているのに、その事を無視して野に放つなど、裁判官は一体、誰の為に司法に携わっているのか分からなくなってしまう。

 

 再犯を考慮せずに保釈した。

 実刑が確定したので出頭を命じたが応じず4ヶ月経ってしまった。

 被告の家に出掛けたが、相手が包丁を振り回したので逃がしてしまった。

 逃げたことが不都合な真実なので、公表まで3時間黙っていた。

 

 裁判所の判事の判断の不可解さ、検察官の判断の甘さ、警察の勇気の無さ

 

 今回の事件は上記の3つの要素が明白だと考える。

 これを、不手際と呼ばずに他に何と言えば良いのだろうか。

 呆れてしまう。

 

 今日も犯人がいた近くの小学校や中学校は休校だ。治安が不安だからだ。

 今の日本はおかしいと良く言われるが、日常生活の中で、年金以前に安穏な日常を送るる事が出来ない危機がすぐ目の前にあることを忘れてはならないだろう。

 

 保釈の実態を見直すべきだ!