いよいよ、妹の様子がおかしい。仕事には行かなくなった。

梶原さんからも日々、妹の気分のメリハリが激しくなると連絡が入る。

 

妹は退院して以来、その病院に付属する下北沢の心療内科クリニックに

週に一度通院していた。思い切ってそこに電話してみる。

 

週に一度通院するはずだが、ここ3週間来ていない、と言う。

僕はクリニックに僕自身が相談に行くことは可能か?と尋ねると

構わない、ということなので予約を取る。

 

大きな病院をのぞけば、僕が心療内科クリニックに行くのはこれが

2箇所目だ。ロクな思い出がないから当然、足も重い。

 

かつて僕が行った村岡先生のクリニックと違ってシンプルで

誰もがイメージしやすい病院然とした待合室が僕を迎えた。

 

クリニックの担当医師は女性だった。

医師が真っ先に心配したのが

 

「妹さんは薬を飲んでいますかね?」

 

そんなこと知らない。この病気が悪化したりすると医師はそう家族に聞くのが

常らしいが、患者が成人女性の場合、24時間監視できないし、

よしんば服用するときに立ち会えたとしても飲むふりして後で吐き出したりされたら

たぶん分からない。

 

ただ医師も再度、入院の可能性が近づいていると感じていた。

 

「もし緊急に入院させる必要があれば私の名前を出してもらって構いません。

 妹さんと私の信頼関係は崩れてしまいますが、何よりも妹さんの安全が第一です。

 こちらからもカルテを送っておきます。」

 

また、アレをやらなければならないのか?と思うとうんざりした。

沖縄でハブでも捕まえている方がまだ気が楽だ。そもそも上手くいくかどうかの

保証もない。

 

最悪の気分で数日過ごす。というのも、インドのときと違って決定的な

キッカケが見当たらない。何かあれば動けるのだが、いや、すでに何かは

起こっているのだけれども、反射的に無心で反応するキッカケが必要だ。

 

変化があったのは僕が新宿で酢豚を食べているときだった。