夜も22時を過ぎた。タバコを吸いに外に出る以外は、5時間くらい

車に座らされている。台湾くらいならとっくに着いている。

 

予想外の所で「錯乱」し姿を眩ましてしまった以上、手のうちようもなく

こうしている以外に方法もない。

 

もう妹は帰ってこないんじゃないか、そういう雰囲気が車内に漂う。

かといってどこで引き上げようと線引きしていいのかも分からない。

 

車はライトを消していたので当然、周囲は真っ暗だ。

 

「ひゃぁ〜!」

 

母が悲鳴なのか、喉の軋みなのか、不気味な音声を発し、僕らは全員、

ふわっと腰を浮かせる。暗闇から突然、人影が現れた。そわそわと鳥肌が立つ。

ちょっとしたホラー映画だ。

 

人影はフラフラと車に近づきぬぉ〜と車内を覗き込む。僕はその人影の存在を

確認しようと前のめりになる。人影は両手を外側からドンッと窓ガラスにつけ

さらに顔を近づける。窓ガラスを挟んでもの凄い至近距離で

僕と人影はお互いの存在を確認しあっている。

 

僕はドアを開け人影の腕を掴む。

 

「あぁ、お兄ちゃん…」

 

相変わらず、間の抜けたリアクションだ。僕とスタッフで挟むように

後部座席に妹を乗せる。

 

まさに「確保」の瞬間だったが何の抵抗もなく、むしろそこに座るのが

当然といった雰囲気で妹は車に乗った。

 

妹が隣にいることで異様な緊張感が生まれ、ホラーな感覚が続いていた。

妹が何かを次に発するまで僕らは何も言葉に出すことが出来なかった。