要は島田くんの話はこうだ。
島田くんは今、フリーでコンサートなどの舞台監督の助手を
している。彼がよく世話になっている会社が今度、大きなライブの
仕事を請け負うことになり、まずフリーの島田くんに声がかかった。
その会社の規模を考えれば、この仕事は大きく、今の人員では
できないと感じた島田くんは人脈を使い人を集めた。
しかし、その会社はできるだけ自力でそのライブを成功させたいと
考えており、会社の代表は、島田くんに内緒で、島田くんが声を
かけたフリー仲間に断りを入れた。
結果、島田くんの顔は潰れ、島田くん自身は声をかけたフリー仲間が
開けてくれた来月以降のスケジュールに心を痛めている。
ゆえに島田くんはハメられたと思っている。
…というのが島田くんの言い分だ。
これを聞いて変だなってすぐに思う人間はあまりいないだろう。
僕もそう思った。そうなのだ。精神疾患だからといって全てが
壊れたり痛んだりするわけではない。木だけを見ればその木は
根を張り枝をつけ葉は青々と色づけしている。
しかしその森をドローンで見ればいびつな形の森だということが
分かるのだが、それには時間がかかる。人の森を見るドローンなんて
ないし、結局は人の森は、その木々を一本一本検証し、結果それを
森として僕自身が眺め直すしか方法がないからだ。
島田くんが話す木に齟齬はないように思えたが一本だけ
腐りかけた枝があった。島田くんが僕に問う。
「でもこれ、織部さんととんねるずが仕掛けたドッキリじゃないですよね?」
僕も島田くんも妻もとんねるずなど面識もない。
島田くんの妻が眉間にしわを寄せて僕の顔を見ていた。
「違う」と僕は眉間にしわが寄らぬように答えた。
そして僕の妹の話をする。まだ、このレベルなら僕の投げるヒントに
気がついてくれるかもしれない。
「僕が妹を最初におかしいと思ったときこんな電話が突然あったんだ。」
「あはははは、あの話ですね!」
かつて僕の妹の件で協力してくれたのでこの事実を知っている島田くんが
うれしそうに笑う。僕は無視して島田くんの妻だけを見た。
「それでね、妹は僕にオノヨーコを紹介してくれ!って突然言うんだ。
知り合いでもないのに。本当に突然、妹が僕にオノヨーコ紹介してって
言うんだよ」
妻がゲラゲラと笑い出した。
「そんなことありえるんですか?信じられない!」
この妻には応用性がないのか?
ありえるか?どうか僕が聞きたい。オノヨーコもとんねるずもありえるんですか?