「思い出もいつかは消えてしまう。雨に打たれながら流す涙のように。」/映画「ブレードランナー」でレプリカント(人造人間)、ロイ・バッティのセリフ
Vangelis - Tears In The Rain
私は毎朝、6時には起きるようにしていた。
家内を起こさないようにそっと寝室を出ると、飼い猫が朝食の督促をするように鳴き声をかけてくる。
それをなだめながら彼専用の器にキャットフードをそよい、足元で彼が食事をし始めるのを確かめた後、
次に人間用のコーヒーを準備すべく、コーヒーメーカーに給水する。
それが湯沸かしを始めると、テレビをつけ、気象予報士が今日の天気を解説しているのを見る。
晴れだ。雨の心配もない。
天候を確認した私は洗濯機の前に移動、洗濯物の内容を確認してスイッチを入れる。
さて、コーヒーが入ったようだ。
流しっぱなしの朝のニュースワイド番組を見ながら1人、ゆっくりとコーヒーを飲む。
一杯のコーヒーを飲みきったところで次に自分のためにトーストを2枚焼く。
2杯目のコーヒーを飲みながら、オレンジマーマレードを塗ったトーストをかじる。
食事を終え、ぼんやりとテレビを眺めていると、洗濯機が作業終了を電子音で知らせてくれる。
いっぱいの洗濯カゴを持って物干しに向かうが、隣の部屋の彼女はまだ寝ているようだ。
無駄な物音をさせないよう、ゆっくりと移動する。
洗濯物を干す配置は我が家なりのルールがあり、それ沿って順番に物干し竿に洗濯物を干していく。
我が家の物干しからは近所の見通しも良く、道も広いが、人やクルマはほとんど行きかわず、朝の挨拶も滅多にする必要がない。
さて、洗濯物が干し終わったので彼女を起こそう。
「おはよう。コーヒー入ってるよ。食パンも焼いておくね。」
と声をかけ準備を始めるため、台所へ移動する。
自分と同じようにコーヒーとトーストを用意し、今日は何を買い物しに行かなくては行けないか?とか、
昼と夜の食事のメニューをどうしようか?などを話し合ったり、洗濯と物干しが終了していることを報告したり、
2杯目のコーヒーを飲みながら、彼女の食事が終わるのを待つ。
世間からは「社会の敗残兵」と見られる、心が壊れてしまった「抜け殻の日々」。
苦しくもあり最近は、懐かしくもある日々。
終。