仕事で重要なことは気合と根性です。
こんなことをいうと時代錯誤と言われるかもしれません。しかし成果を出すには弛まぬ努力に裏打ちされた試行錯誤が必要です。その成果に対する試行錯誤は何より気持ちがなければ実現できません。
人間は誰しも楽なほうに流されます。楽なほうに流されると、集中することがなくなります。集中することがなくなると意識が散漫になります。意識散漫で余計なことを考える余地が生じます。余計なことを考える時間が長くなると、生産性が悪くなります。生産性が悪くなると仕事がつまらなくなります。仕事がつまらなくなると目標がなくなります。目標がなければ計画もなく、実行力もなくなるので無気力になり、最低限の仕事しかしなくなってしまいます。
管理職は常に部下に対して闘魂を注入する必要があります。これを現代風に格好よく言えば、モチベーション管理、モチベーションマネージメントでしょうか。
インテルの元CEOアンドリュー・S・グローブはマネジメントの目的は、チームの成果を出すこと。そのために、メンバーの能力向上とモチベーションを与えることが上司の役割だと言っています。
前項でもお話してきたように、やる気にさせる手法はさまざまあります。僕がその中で最も効果的だと確信しているのが、憧れによるモチベーションUPです。言い換えれば関係性のマネージメントです。
僕には忘れられない上司が数人います。いつも気にかけて期待してくれた上司。いつも率先垂範でカッコイイ姿を見せてくれた上司など。
上司が頑張っているから、自分もその頑張りについていきたい。
上司がいつも期待をしてくれているから、その期待に応えたい。
なにかあったときに常に僕をフォローしてくれたからその恩を返したい。
そして、いつかあのようなデキル人になりたい。という憧れです。
憧れは仕事においてとても強いモチベーションです。上司が部下に教えようとしなくても、部下が上司に教えを積極的に乞うようになります。僕は仕事柄、教える仕事をしているせいか、どんな本を読んでいるのか教えて欲しい、目標設定の仕方を教えて欲しいと受講生から質問をされることがあります。こちら側から○○をやったほうがいいよと教えるより、当然自発的に質問してくるほうがモチベーションをもってその行動をとることができるでしょう。
ではどのようにしたら憧れの存在になれるのでしょうか。
憧れの存在になろうとしてなれるものではないのが難しいところです。しかし、とてもシンプルで簡単です。それはあなたが真剣に仕事をしているかいないかだけです。
少し余談になりますが、僕が営業研修でお伝えしている営業の本質をお話いたします。
営業は物を売ることでも、お金を回収することでもありません。利益を上げることすら仕事ではありません。それは作業の一環です。本来の仕事は“伝える”こと。何を伝えるのか。商品やサービスの良さを伝えるのではなく、自分の震えていることを伝える。
どんなに上手なプレゼンテーションをしても、自分の心が震えていない限り、人の心を震えさせることはできません。「そういえばこのあいだ食べたラーメンがめちゃめちゃうまくてさ!」って、これにはプレゼンスキル不要で、相手に伝わります。なぜかというと自分が感動しているからです。自分の心が震えていれば、相手の心も震えさせることができます。
あなたが真剣に仕事をしていれば、それは伝えようとしなくても部下に伝わります。その真剣さ、真摯さが憧れに繋がります。
WIN-WINという考え方が一般的です。社員は報酬をもらい、企業も利益を得る。上司もチーム成果を達成し、部下も自分の成果を達成し、それぞれが適切に評価をされる。たしかにWIN-WINでなければ組織やチームは存続できません。
しかしながら、僕は上司と部下の最高の関係性は真逆だと思っています。WIN-WINではなくLOSE-LOSEです。
部下「課長、僕なりに考えた新しい企画があります。もちろんさまざまなリサーチをしましたが、見込みは半々です。それでもこれで勝負したいんです!」
上司「そうか、そこまで言うならやってみよう。失敗したら俺が責任とるから」
お互いにリスクを引き受けあうLOSE-LOSEこそが、関係性によるモチベーションではないでしょうか。
何を言うかのその手前に、誰が言うかがもっとも重要だ。
浅井隆志