ほめて伸ばすという風潮がマネージメントでもまことしなやかに浸透しています。確かに褒められれば気分は良いですし、テンションも上がります。しかし一時的な効果しかみこめないケースが多いようです。一度褒められてことで、いったいそのモチベーションはどれだけ続くのでしょうか。せいぜい、1,2日ではないでしょうか。褒めて動機づけをするなら、ほぼ毎日褒め続けなければいけなくなります。ご機嫌取りのマネージメントはそのうち効果も薄れますし、すり寄る感じがなにより気持ち悪いです。
・褒めるより効果のある“認める”
十人十色。人生の価値観もさまざま、仕事で喜びを感じる価値観もさまざまです。しかし喜びの大小はあると思いますが、お金をたくさんもらえるのは誰しもが嬉しいはずです。
社員のモチベーションをあげようと、営業コンテストを開催して臨時賞与を出す。このような試みをされている営業会社さんもあります。お金はいわゆるアメとムチのアメでのマネージメント手法です。しかし、そうそう長続きしません。たしかに瞬間風速を最大にすることはできますが、継続力がありません。
例えば、あなたの月給が3万円あがったとします。「よっしゃ!がんばるぞ!!」さて、このモチベーションはどれくらい続くでしょうか。せいぜい1,2週間、もって一か月くらいではないでしょうか。
仕事への意欲を向上させる、モチベーションを高めるためには、褒めるでもなくお金でもなく“認める”が効果的です。長期的かつ持続可能なモチベーションマネージメントです。
褒めると認めるの違いは簡単です。認めるは、部下の取った行動を言語化するだけです。
例)資料作成
褒め「めっちゃきれいに作れるようになったねーすごいねー!」
認め「今日は見やすくするために表に色分けをしたんだね」
例)電話営業
褒め「テンション高くていいね!」
認め「テレアポのトーンを少し変えているようだね」
例)営業
「熱心に頑張っているねー食らいつくとこすごくいいよ」
「追客のタイミングを自分でルール決めしているんだね」
あなたの取っている行動はきちんと私が見守っていますよ、そしてその行動を評価していますよ、ということを暗に伝えられるのが“認め”です。
ハーズバーグの動機づけ衛生理論をご紹介します。二要因理論とも呼ばれています。
どのような理論かというと、仕事の満足と不満をどこで覚えるかをリサーチ、分析したものです。
仕事に前向きになれる状態、もしくは満足度の高い状態は何が起因しているのか。逆に仕事に後ろ向きな状態、もしくは満足度の低い状態は何が起因しているのか。これらを調査分析しました。
調査結果で面白いことがわかりました。満足の要因と、不満足の要因が別々だということです。一つの要因の大小で満足、不満足になるということではないということです。
不満足の要因は、給与や福利厚生、職場環境などです。これを衛生要因と言います。
満足の要因は、承認、必要とされる、認められるなどです。これを動機付け要因と言います。
衛星要因は、不満につながりやすい要素です。整備されても仕事を前向きにさせるものではありません。あくまでも不満がなくなるだけです。動機付け要因は促進要因とも呼ばれ、あればあるほど仕事を前向きにさせるものです。
僕は過去に勘違いをして失敗したことがあります。優秀な社員を抱えこむために、高水準の給与を払っておけば済むという勘違いをしていました。かなりの高額報酬を払っていた社員が、ある日突然辞めると言ってきました。理由を聞くと「私はこの会社に必要がないとおもいます」でした。良い給料、さらに良い待遇なのに辞めるなんてありえないと勘違いしていました。
思い返せば僕も仕事のモチベーションはお金だけではありませんでした。僕自身も高率歩合の会社でもらっていない歩合を捨てて、ヘッドハンティングを受け入れた経験があります。その時も「ぜひ、浅井君の力を貸してもらいたい」その言葉でもらっていない歩合を捨てて転職した経験を思い出しました。
お金は生きていくうえでとても大切です。守るべき生活、守るべき家族がいればなおさらです。お金も大事ですし、それと同等、もしくはそれ以上に認められる、必要とされるは人間としての喜びです。
人は取った行動を繰り返しまわりから肯定されると、脳内で喜びを感じ、またその行動をとろうとします。良い行動、成果につながる行動をとった時こそ、認める絶好のタイミングです。
認めるは最大の報酬である
浅井隆志