子供の頃、日曜日になると、父が朝ごはんを買ってきた。
毎週ではないけど、買い物に行かない父が買ってくる。
時には青山のファーストキッチンだったり、時にはデパートに出向いてお弁当を買ってくる。
母は日曜日になると、存分に寝坊をする。
お腹を空かせ、口を開けている僕を含めた三匹に、エサを運んでくれるのだ。
なかでも、お気に入りは、崎陽軒のシュウマイ弁当だった。
特別に美味いわけじゃない。
好き嫌いの激しい僕が、綺麗に食べられる唯一の弁当。食べ切れた満足感からか、僕の好きな味となった。
営業マン時代、夢を描いた。
人前で話す仕事がしたい。地方から呼ばれて出張をしてみたい。
出張は、なんだかデキル男に似合う言葉だと感じていた。
当時は出張のない営業職。飛行機や新幹線に乗って、仕事へ向うことに憧れた。
そして、その新幹線で、崎陽軒のシュウマイ弁当を食べる。
些細な夢を描いた。
夢は今、現実となった。
夢は今、日常となった。
新幹線のグリーンに乗り、シュウマイ弁当を食べる。
行き先は広島。たった一時間の講演のために往復10時間をかけて向う。
今日は、車のメーカー、スバルにて講演をする。
独立する前は、大企業で講演ができるとは思わなかった。
夢は夢だと割り切っていた。
でも、叶えたいという気持ちだけは持ち続けていた。そして、行動をした。
スキーやスノボで、雪山から滑降する時に、坂が急に見えて、足がすくむ。
それでも勇気を振り絞って滑りおりれば、なんてことはない。
下から上を見上げれば、たいした勾配ではなかったと感じる。
行動は裏切らない。なにより、自分への裏切りがない。
まっすぐに。そして、まっすぐに。