コンビニで買い物をする時、財布の中身を何度も見た。

外食の時は、一番お腹が膨れて、安いものを選んだ。


タバコを買うお金がなくて、家中の小銭をかき集めた。




お金が欲しいと思った。




高い車に乗りたいと思った。

ブランド品が欲しかった。



それから数年。



全てを手に入れた。




高級な店で、高級な肉と酒を平らげた。

最高級車を乗り回した。


ブランド品で、身を包んだ。



これが、成功かと。

これが、幸せかと。

これが、永遠かと信じていた。





それから、また数年。


本当のことを、知った。


いや、知らされたのかもしれない。




いま、何を食べるかではなく、誰と食べるかが大切になった。

車は見栄を無くしたら、何でもよくなった。

ブランド品ではなく、職人の手作りに興味が湧くようになった。

物欲はなくなった。



ただ、大切な人と過ごす時間が欲しくなった。

この頃の話。




36年前に痛みに耐えた母に感謝。



浅井隆志