こんにちは!
いきなりですが―― 「明日から3,500km、山道を歩いてください」 と言われたら、どうしますか?
 
靴。 荷物。 体力。 天候。
考えるほど、「無理かも」と感じます。
 
でも約70年前。 それをほぼ普段着で、67歳でやった女性がいました。
安いスニーカー1足。 手作りの小さな巾着袋ひとつ。
それだけで、3,500kmを歩ききった人です。
 
彼女の名前は、エマ・ゲイトウッド。 (親しみを込めて「ゲイトウッドばあちゃん」と呼ばれています)
 
今日はこの人の話を、テンポよくお届けします。
 

きっかけ

エマの人生は、苦労の多いものでした。
 
農場での厳しい仕事。 何十年も続いた夫からの暴力。
11人の子どもたちを必死に育て、離婚が成立したとき、彼女はすでに60代でした。
 
そんなある日。 彼女は雑誌で、アメリカを縦断する大自然の道「アパラチアン・トレイル」の記事を目にします。
 
何か心に灯るものがあったのでしょう。 彼女は子どもたちに、
「ちょっと散歩に行ってくるね」
と言い残し、家を出ました。
 
その「散歩」の距離が、まさか3,500km。 家族も驚きます。
 

持ち物

彼女の装備は、驚くほどシンプルです。
 
高価なアウトドア用品はありません。 身につけていたのは普段着のデニム。 靴はキャンバス生地のペラペラなスニーカー(ケッズ)です。
リュックの代わりに、手縫いのデニム巾着袋を肩にかけていました。
中身は……
  • テント代わり:シャワーカーテン1枚
  • 寝袋代わり:毛布1枚
  • 干しブドウ、ナッツ、缶詰など
重い荷物は背負わない。 身体ひとつで、自然に入り込む。 そんな歩き方でした。
 

理由

3,500kmの道のりは、楽ではありません。
 
雨に打たれ、服はびしょ濡れ。 岩場で転び、メガネが割れたことも。
夜は冷たい地面。 シャワーカーテンを敷き、温めた石を抱いて眠ったそうです。
 
それでも彼女は歩きます。 一歩。 また一歩。 自分のリズムで。
 
後になって、こう聞かれました。
 
「どうしてそんな過酷な旅をしたの?」
エマは、ただ笑って答えます。
 
「ただ、歩きたかったから(Because I wanted to.)」
 
理由はシンプル。 前へ。 それだけです。
 

余計なもの

1955年の秋。 彼女はゴールを達成しました。 ボロボロになったスニーカーを、何足も履き潰しながら。
 
その後も彼女は、70代になっても歩き続けます。 そして、多くの人に勇気を与えました。
 
エマの姿は、気づかせてくれます。 私たちは、思っている以上に「余計なもの」を抱えて歩いている。
靴の性能。 まわりの目。 効率の良さ。
それは二の次でいい。
 
大切なのは、風をを感じる。 心地よいリズムで歩く。