『アルジャーノンに花束を』 | 編集プロダクション 文筆堂のブログ

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●『アルジャーノンに花束を』[新版]

著者:ダニエル・キイス

訳者:小尾芙佐

発行:2015年3月10日

版元:早川書房(ハヤカワ文庫)

定価:本体980円+税

 

本作の日本語訳が単行本として

初お目見えしたのは1978年のこと。

もう50年近くも前のことになるのか……。

 

例によって、カバー裏の“BOOK紹介”からの引用。

<32歳になっても幼児なみの

知能しかないチャーリイ・ゴードン。

そんな彼に夢のような話が舞いこんだ。

大学の先生が頭をよくしてくれるというのだ。

これにとびついた彼は、白ネズミのアルジャーノンを

競争相手に検査を受ける。

やがて手術によりチャーリイの知能は向上していく……

天才に変貌した青年が愛や悲しみ、

喜びや孤独を通して知る人の心の真実とは?

全世界が涙した不朽の名作。>(以下略)

 

物語は、チャーリイ・ゴードンの一人称で綴られるが、

最初の頃はやたらひらがなが多く、誤字脱字も少なからずある。

翻訳の小尾芙佐さん、じつにうまい! と思った。

原文の英語ではどう表現されているのだろうか。

 

チャーリイ・ゴードンの場合とは違うが、私たち高齢者には、

認知機能の衰えによる記憶力の減退はいつ始まるのか……、

いや、すでに失くした記憶も少なからずあるのでは……、

そもそもいつまで生きられるのか……、

などといった恐怖心が頭のどこかにある。

 

読み進むにつれ、なぜかそんな思いが

ふだん以上に押し寄せてきたからなのか、

この物語がよけいに切なく感じられた。

 

ちなみに著者のダニエル・キイスは、

2014年に86歳で亡くなっている。