『サマータイム・ブルース』[新版] | 編集プロダクション 文筆堂のブログ

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●サマータイム・ブルース[新版]

・サラ・パレツキー[著]

・山本やよい[訳]

・2010年8月15日[発行]

・ハヤカワ・ミステリ文庫

 

『サマータイム・ブルース』といっても、ブルー・チアーやジャニス・ジョップリンのアレではない。

なぜか突然、翻訳の女性探偵ものが読みたくなり、テキトーに検索しているうちにサラ・パレツキーという女流作家が女性探偵V・I・ウォーショースキーを主人公とするシリーズを書いていることを知り、どうせなら1作目から読んでみようということで、『サマータイム・ブルース』に行き当たった。こちら、パレツキーのデビュー作でもある。

巻末の「解説」(by池上冬樹)によると、スー・グラフトンの『アリバイのA』と共に女性探偵ものの記念碑的な作品らしい。

 

 例によってカバー裏を丸写しさせてもらうが、物語はこんな感じで始まる。

<夜遅くに事務所を訪れた男は、息子の恋人の行方を捜してくれと依頼する。簡単な仕事に思えたが、訪ねたアパートで出くわしたのはその息子の射殺死体だった。依頼人が被害者の父親ではないことも判明し……>

 

アメリカでの原作の出版が1982年。邦訳の出版は1985年、そして[新版]が2010年と今から10年ちょい前。当然、アメリカの社会情勢は大きく変わり、事件の背景にはやや古さも感じるが、圧力にも暴力にも屈しないウォーショースキーの姿は今読んでも誰かのハゲ頭以上に輝いている。

 女医のロティ・ハーシェルなど主人公を取り巻く人物たちもなかなかいい味を出している。

 

女性探偵が事務所を構えるシカゴの暑苦しさが、真冬間近のサイタマで読んでも迫ってくるハードボイルドな作品だ。