監督・脚本 ジョナサン・グレイザー
原作 マーティン・エイミス
音楽 ミカ・レヴィ
撮影 ウカシュ・ジャル
編集 ポール・ワッツ
出演 クリスティアン・フリーデル、ザンドラ・ヒュラー、ラルフ・ハーフォース
2023年度 製作国 アメリカ/イギリス/ポーランド 上映時間 1時間45分
NMB48の新公演「天使のユートピア」に当選して、難波に出た序に、
地元の映画館では上映されていない「関心領域」を、公演前に観てきました。
原作は、2014年に出版されたマーティン・エイミス14作目の同名小説。
「関心領域」とは、ポーランドのオシフィエンチム市の一地区と付近の住民を追放した
のちに設けられた、40平方キロメートル以上に及ぶ親衛隊の管理区域(日本語訳原作本から
抜粋)のことで、アウシュビッツ第一強制収容所が作られた場所です。
内容は、アウシュビッツ第一強制収容所と壁一枚を隔てた場所に建てられた邸宅に住む
ナチス将校一家の平和な生活と、収容所から漏れ聴こえてくる叫び声や悲惨な状況を
想起させる間接的な描写を対比させて、現実を直視せずに見て見ぬ振りする、
関心領域の中で暮らす平和ボケした私達に向けて問いかけた、メッセージ性のある
作品です。
映画は感情を刺激するような場面が少なく、焼却炉で大量に囚人が焼き殺されている事に
対して、ナチス将校一家は一切の動揺を見せずに無関心でいるので、想像力に乏しい
人には、睡魔に襲われる退屈な映画かもしれませんが、一家の有閑さと怠惰の罪を
観客にも共有させるために、あえて監督は単調な技法を選んだのかもしれません。
地獄を見た後に、天使のアイドルが理想郷で舞い踊るライブを鑑賞した一日。
この瞬間も世界のどこかで進行しているジェノサイドに対して、
何もできない私の罪は深い。