ケス(ケン・ローチ監督作品) | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

 

監督・脚本 ケン・ローチ

原案・脚本 バリー・ハインズ

撮影 クリス・メンゲス

編集 ロイ・ワッツ

音楽 ジョン・キャメロン

出演 デヴィッド・ブラッドレイ、フレディ・フレッチャー、リン・ペリー

1970年度 製作国 イギリス 上映時間 1時間50分

 

イギリスの炭鉱町で、家族を捨てた父親の代わりに一家を支える母親と炭鉱で働く

ヤクザな兄と貧しく暮らす少年は、将来の夢もなく、日々悶々と過ごしていたが、

ある日鷹の巣で見つけた雛をケスと名付けて、調教する事に生甲斐を見つけることに

なるのだが…

労働者階級の社会問題をクローズアップした作品を撮り続けているケンローチ初期の

代表作で、「カルラの歌」以降の脚本家ポール・ラヴァーティとのコラボレーション作

とは趣きが違って、アジテーションを前面に出さずに、主人公を取り巻く環境を

ありのままに映しだすことで、見えているようで見えていない現実を炙り出して行きます。

同じイギリスの炭鉱町を舞台にした「リトル・ダンサー」(主人公の少年の名前が同じ

ビリー)のようなサクセスストーリーではなく、観終わった後に突き放された気分になる

ネガティブな作品ですが、少年が大人たちから受ける仕打ちに強かに耐え抜く姿に、

ローチの少年に対する愛情が垣間見えて、その思いを理解した観客に対して、

目を背けていた現実に対峙する切っ掛けを、生み出していると思います。

 

ローチがケスは日本語にすると化す(姿や形が変わる)になることを知っているとは

思いませんが、唐突に終わるラストシーンを見て、鷹も少年も生まれ変わると言う

意味が込められているんだと、勝手に解釈しています。

 

 

 

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