監督 ルキノ・ヴィスコンティ
原作 アルベール・カミュ
脚本 スーゾ・チェッキ・ダミーコ、エマニュエル・ロプレー、ジョルジュ・コンション
撮影 ジュゼッペ・ロトゥンノ
編集 ルッジェーロ・マストロヤンニ
出演 マルチェロ・マストロヤンニ、アンナ・カリーナ、ベルナール・ブリエ、
ジョルジュ・ウィルソン、ブリュノ・クレメール
1967年度 製作国 イタリア/フランス/アルジェリア 上映時間 1時間44分
「生きることへの絶望なしに、生きることへの愛はない。」アルベール・カミュ
原作者のカミュは幼い頃は貧しかったが、太陽の美しさに救われたと語っているように、
太陽と海の意味を持つ主人公のムルソーを、反文明的な存在として位置付けているわけですが、
ムルソーの孤独で刹那的な生き方は、ニヒリズムが蔓延する現代社会では特別なものでは
なくなり、殺人の動機が「太陽が眩しかったから」の感情を不条理と捉える人は、
今では少ないのではないかと思います。
「異邦人」が出版されてから25年後に、ルキノ・ヴィスコンティによって映画化された
本作を観ると、原作に忠実に作られていますが、ムルソーの内面から見た世界ではなく、
熱気が充満するアルジェリアのリアリズムな世界そのものが主役になって、
ムルソーを取り巻く社会を不条理なものとして捉えている点が現代的です。
現代人とムルソーの違いは、“世界の優しい無関心”に絶望して、死を受け入れたムルソー
と違って、現代人には匿名性を維持しながら社会と繋がることが可能な点で、
「幸せになるためには、他人に関与しすぎてはいけない」と考えていたカミュが現代に
生きていたら、どんな異邦人が生まれていたのか興味が尽きません。