アス  ジョーダン・ピール監督作品 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

監督・脚本 ジョーダン・ピール

撮影 マイケル・ジオラキス

編集 ニコラス・モンスール

音楽 マイケル・エイブルズ

出演 ルピタ・ニョンゴ。ウィンストン・デューク、エリザベス・モス

2019年度  製作国 アメリカ 上映時間 1時間56分

 

自分自身の分身に襲われる家族を描いた、ドッペルゲンガーを題材にした恐怖映画ですが、

分身に襲われるのが主人公一家だけではなく、町の住民すべてという設定なので、

サイコホラーの範疇を超えて、ゾンビ映画擬きのパンデミックの恐怖にまでスケールアップされた、

常に何かの恐怖に苛まれているアメリカ社会の病根をメタファーした作品になっています。

監督は、アフリカ系アメリカ人コメディアンのジョーダン・ピールで、前作「ゲット・アウト」では

単なるサイコホラー映画に終わらず、ブラックコメディーを織り込んだレイシズム批判を

エンターテインメントで見せた手腕が高く評価されましたが、今回は社会を形成する人間の

闇の部分を対比させる視点で、アメリカ社会の2極化構造に対する問題定義がなされていますが、

手を繋ぎ合っている分身たち、ホームレスの男が持つダンボールに刻まれた11:11の文字、

影の世界に通じる道を埋め尽くしている白うさぎ等ストーリーを補填する伏線の張り方を

抽象的にして、主人公の母親(ルピタ・ニョンゴが好演)を「エイリアン2」のリプリーの様に、

家族のために体を張って勇猛果敢に戦う猛者にすることで、台詞を抑えて見せる事に徹した、

娯楽性の高いアクションホラー映画に仕上げているので、前作を評価されている方には、

荒唐無稽な内容に見えるかもしれません。

 

 

 

 


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