監督 スティーヴン・ボグナー、ジュリア・
撮影 スティーヴン・ボグナー、オーブリー・キース、ジェフ・ライカート、ジュリア・ライカート
エリック・ストール
編集 リンゼイ・ウッツ |
音楽 チャド・キャノン
オバマ前アメリカ大統領は、映画、音楽等のお気に入りリストを毎年発表する程ポップカルチャーに
造詣が深く、自らも映画製作会社を立ち上げていますが、その記念すべき第一作目になったのが、
昨年公開されたドキュメンタリー映画「アメリカン・ファクトリー」で、今年のアカデミー賞長編
ドキュメンタリー部門にノミネートされています。
2008年に不況のために閉鎖されていたGMデイトン工場が、中国最大の自動車ガラスメーカーの
フーヤオに買収されて再開することになり、多くの雇用が創出されると、当初は救世主として
歓迎されますが、安全な職場環境と給与の待遇改善を求めて、利益優先で劣悪な労働環境に
強いるれることを良しとしないアメリカ人と会社への忠誠心を誓い、生きるためにロボットの様に
働かされても不平を言わない中国人との職に対する意識の違いやグローバル化の問題点が
やがて鮮明になり、UAW(全米自動車労働組合)を巻き込んだ労働争議へと発展して行きます。
監督は労働組合の有無を巡って、それぞれの立場にいる人物の生の声を拾って構成する事で、
どちらかに肩入れすることなく、雇用のあり方を観客にも考えてもらうというスタンスを取っていて、
70年代以降に組合潰しコンサルト業者が急成長していることや工場の機械化が加速して、
2030年までに世界中で4億人近くが失職するという事実を伝えることで、私たちの身近な
問題として提示しています。
アメリカ工場で労働組合を作ることを頑なに拒否するフーヤオですが、中国の本部には
労働組合が存在することが紹介されます。しかし組合長が共産党委員会の第一書記で
フーヤオ会長の義弟が務めているように、従業員ではなく会社及び国家ありきの組合で
あることが分かります。
アメリカも日本も嘗て中国と同じような道を歩んで経済発展を遂げてきました。
フーヤオ本部労働組合長の「同じ船に乗るもの同士、船の安全が第一だ。船が沈めば職を失う。」の
考えもまた正論と言えるところに、管理社会で生きる事の意味を問われる作品です。