監督 レニー・エイブラハムソン
原作・脚本 エマ・ドナヒュー
撮影 ダニー・コーエン
編集 ネイサン・ヌーゲント
音楽 スティーヴン・レニックス
出演 ブリー・ラーソン、ジェイコブ・トレンブリー、ジョアン・アレン
ウイリアム・H・メイシー
2015年 カナダ/アイルランド
少女監禁を題材にした映画は猟奇趣味を際立たせた作品が多いのですが、
本作は、拉致された女子大生と犯人の間に生まれた男の子の視点で、
世界や自由の意味を、母と子のサバイバルを通して描いて行きます。
男の子は監禁された部屋の中で、母親の愛情を受けて育って行きますが、
母親が作り出した世界の外にある現実を知らないという点で、「マトリックス」で
描かれた仮想現実を見せられてきたネオのように、部屋から解放されてから
様々な困難が待ち受けています。
新しい世界へ踏み出して行くことで、母と子の本当のサバイバルは始まる
わけですが、ネット社会に生きる私たちも、パソコンやスマホの画面から
発信される情報に管理されて、小さな部屋に監禁されていた男の子と同じような
状況にいるわけで、自分がいる現実の風景や時間を、モニターを通さず直視
する勇気を持てるのかが、私たち自身にも問われた作品だと思いました。
本作は、エマ・ドナヒューのベストセラー小説を本人自ら脚色していますが、
映画で描かれる拉致犯は、原作に比べて怖さが無いので、部屋から脱出を
試みるまでの緊迫感が希薄で、映画的な醍醐味に欠けるし、後半の母親が
受ける社会からの偏見も切り口が弱く、感情を揺さぶられることはありませんでした。
救いは子役を演じたジェイコブ・トレンブリーが、母親によって純粋培養された
弱弱しい男の子を完璧に体現していて、アカデミー賞で最優秀主演女優賞を
受賞した母親役のブリー・ラーソンよりも心に残りました。
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