日本兵が人肉を食べる映画?「アンブロークン」 | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

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監督 アンジェリーナ・ジョリー

原作 ローラ・ヒレンブランド

脚本 ジョエル&イーサン・コーエン、リチャード・ラグラヴェネーズ、ウィリアム・ニコルソン

撮影 ロジャー・ディーキンス

出演 ジャック・オコネル、ドーナル・グリーソン、フィン・ウィトロック

2014年 アメリカ


原作は、「シービスケット」で知られる、アメリカのノンフィクション作家ローラ・ヒレンブランドが、

1936年のベルリンオリンピックに、アメリカ代表として出場した陸上選手ルイス・ザンベリーニの

生涯を題材にして執筆した小説で、ザンベリーニが第二次世界大戦中に体験した、B24爆撃機の

故障により不時着した太平洋での47日間の漂流生活と、日本軍の捕虜収容所での死闘が元で、

帰国後PTSD(心的外傷後ストレス障害)に苦しめられるが、キリスト教の信者になって救済され、

日本人に対して持っていた憎しみから脱して、赦しの感情を得るまでの、サバイバル・不屈・贖罪と

副題通りの物語が描かれていますが、それを証明することになった、1998年に長野オリンピックで

聖火ランナーのひとりとして来日したザンベリーニが、捕虜として収容されていた直江津の街を

走ったエピソードはあまりにも有名です。

映画化に手を挙げたのが、自ら人道支援のために現場に赴き、精力的な慈善活動で世界的な

評価を受けているアンジェリーナ・ジョリーなので、勧善懲悪物の低俗な反戦映画は作らないだろうと

期待したのですが、終戦後のヒューマンな部分が全く描かれず、ザンベーニに対する、捕虜収容所の

所長渡辺のイジメに近い虐待がメインになっていて、原作者がインタビューで答えているように「私は、

この物語が、太平洋地域に第2次世界大戦をもたらした日本とアメリカの中にあった勢力を研究し、

抗争に関わった全ての人々に理解と癒しをもたらす機会を提供していると、考えました。ルイス・

ザンベリーニの人生は、赦しが持つ力を証明しています。」と言う、報復の連鎖によって傷つけ合う

人類の愚かさを戒めるメッセージが抜け落ちてしまっているのです。

但し、原作に描かれているらしい、捕虜たちが人体実験で殺されたり、焼き殺されたりと言った

殺戮シーンや日本兵が生きたまま捕虜の人肉を食べる?と言った場面は無く、過去に作られた

収容所を舞台にした映画と変わらない見慣れた描写が続くだけで、目を背けたくなるような

残酷さはありませんし、B29の空襲で焼け野原になった東京の市街と、横たわる一般市民の亡骸を

見せて、アメリカ側の暴力も見せているので、マスコミが書き立てているような反日目的の映画では

ないので、プロパガンダに惑わされずに、自分の目で確かめてもらいたいです。



渡辺所長を演じたのが、紅白歌合戦でSMAPと共演した世界的ギタリストのMIYAVIで、

「戦場のメリークリスマス」で所長を演じた坂本龍一そっくりのメイキャップに笑ってしまいましたが、

渡辺所長は、上流階級出身のプライドと将校になり損ねた腹癒せから、オリンピック選手で

反抗的なザンベリーニに対する虐待を生んだ要因であることが原作では書かれていますが、

映画では、その背景が描かれていないので、所長が唯のいじめっ子にしか見えないところが、

反日映画として右翼に糾弾される材料になっているのではないでしょうか。




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