ツリー・オブ・ライフ | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう


人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督・脚本 テレンス・マリック

音楽 アレクサンドル・デスプラ

撮影 エマニュエル・ルベツキ

編集 ハンク・コーウィン、ジェイ・ラビノウィッツ、ダニエル・レゼンデ
    ビリー・ウェバー、マーク・ヨシカワ

出演 ブラッド・ピット、ショーン・ペン、ジェシカ・チャステイン

2011年 アメリカ


世俗に生きる父と、神にすべてを委ねる母との間で育った少年が、
権力を誇示する父の作り出した世界に反撥しながらも、
やがて父の影響を受けて実業家として成功するが、
いつしか、宇宙誕生から連綿と連なる命の連鎖の中で、
人類が宇宙の一部であることを悟り、人間が作り出したちっぽけな社会が、
仮初めの世界でしかない事に気付く。

『ツァラトゥストラはかく語りき』で“神は死んだ”と言って、
20、21世紀がニヒリズムの時代であることを予言したニーチェですが、
本作は、“神は生きている”と再び神の復権を謳った、
『テレンス・マリックはかく語りき』と言える人間のアイデンティティーに迫った作品で、
神の創造物である水、光、土、木などが命の源として、
全編を通して意識的に描かれています。

台詞を極端に少なくして、映画の持つ特性を最大限に生かした映像表現の素晴らしさは
特筆もので、ラストシーンは、あたかも、生命の樹(ツリー・オブ・ライフ)から発散される
フィトンチッドによって、心の傷が癒されるか如き至福感をもたらしてくれます。

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

本作はブラッド・ピット、ショーン・ぺンが出演しているお陰で、
単館劇場ではなく、近くのシネコンで鑑賞することが出来ましたが、
『バベル』の時もそうだったのですが、哲学的で難解な映画と知らずに、
予告編に騙されて鑑賞してしまった純真な映画ファンから、
予想通りに批判的なレビューが殺到しています。
私が観た上映回は、年配の方が多かった所為か、
誰一人欠伸をする人や途中退席する人がいなかったので、
まだ世俗的なものに裏切られていない若者には不向きな映画と
言えるのではないでしょうか。

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