アメイジング・グレイス | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督 マイケル・アプテッド
脚本 ティーヴン・ナイト
撮影 レミ・アデファラシン
出演 ヨアン・グリフィズ、ロモーラ・ガライ、ベネディクト・カンバーバッチ
    アルバート・フィニー、マイケル・ガンボン
2007年 イギリス

日本では、本田美奈子の熱唱が記憶に新しい名曲『アメージング・グレイス』。
作詞したのが、18世紀に奴隷貿易で財を成した、イギリス人のジョン・ニュートンという男で、
航海の途中で嵐に遭遇して生死の境を彷徨いながら、奇跡的に一命を取り留めたことが
切っ掛けで改心して牧師になり、贖罪と神への感謝を込めて、この詩を書いたとされています。
本作は、ニュートンの教会での説教を聞いて影響を受けた若き国会議員ウィリアム・ウィルバフォース
が、『アメージング・グレイス』の詩に触発されて、『奴隷船廃止法案』を成立させるまでの20年間の
苦闘を描いた作品で、奇しくもこの年にジョン・ニュートンが亡くなっています。
さらに、ウィルバフォースが亡くなった1833年には、イギリスで奴隷制廃止法が成立しているに
及んでは、不思議な因縁を感じずにはいられません。
家畜よりも酷い扱いを受けて輸送される黒人奴隷たちが、現地に到着するまでに数多く死んでいく
劣悪な船内の様子が主人公によって間接的に語られますが、観客は、直接に映像で見せられるより
想像力を喚起されるので、より一層に心の痛みを増幅させられるのです。
製作者のひとりに、「ツリー・オブ・ライフ」で、今年のカンヌ映画祭のパルムドールを受賞した
テレンス・マリックの名前がありますが、作品自体は、学校の教材になるような、シンプルで
オーソドックスな作りの自伝映画で、作品としての妙味に欠けますが、『アメージング・グレイス』が
生まれた時代背景を知るには勉強になる映画です。
因みに17世紀から18世紀にかけての奴隷貿易は、ヨーロッパからアフリカに武器を供給する見返りと
して、捕虜を奴隷として手に入れ、当時のヨーロッパでは喫茶の人気で砂糖の需要が高まっていた事を
受けて、労働力を必要としていた砂糖生産地の西インド諸島に向かい、黒人奴隷と白い砂糖を交換して
いたことで、三角貿易と言われていたそうで、これから、コーヒーに砂糖を入れるたびに、この映画を
思い出してしまいそうです。






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