カラフル | 人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

ネットの海を漂う吟遊詩人になって
見知らぬあなたに愛を吟じよう



人力飛行少年の肉体を脱ぎ捨てたなら

監督 原 恵一

脚本 丸尾 みほ

原作 森 絵都

声優 冨澤 風斗、宮崎あおい、南 明奈

2010年 日本


大きな過ちを犯して死んだ男の罪な魂が、輪廻のサイクルに戻って
生まれ変わるチャンスを与えられ、前世の記憶がないまま、
自殺した少年の体を借りて修行(ホームステイ)することになりますが、
やさしくて愛情ぶかいと思っていた少年の母親は、最近までフラメンコ教室の
講師と不倫をしており、父親は自分さえよければいい利己的な男で、
兄は無神経で意地悪、さらに恋心を抱いている後輩は、中年男と
援助交際をしている事を知る。
前世で犯した罪の大きさによってホームステイ先が決まると、ガイド役の
天使から教えられていた罪な魂は、少年の代役で再挑戦することに
憂鬱になるのだった。

児童文学で名声を得て、2006年に『風に舞いあがるビニールシート』
で直木賞を受賞した森絵都のヒューマン・ファンタジー小説を、
『クレヨンしんちゃん』劇場版、『河童のクゥと夏休み』の原恵一が
アニメ化した本作は、今年のアヌシー国際アニメーション映画祭で、
長編作品特別賞と観客賞を受賞するなど高い評価を受けている作品で、
いじめ、援助交際、不倫、自殺などの、実写でも表現可能なシリアスな題材を、
わざわざアニメ化したのは、一番観てほしいと思っている中学生を中心にした
純粋な世代に対して、人間のリアルな部分を、少しでもオブラードに包んで
表現したかったからなのでしょう。

『人間は一色じゃなく、いろんな色を持っているんだ。
持ってていいんだ。きれいな色も汚い色も、
僕だってどれが自分の色か分からなくってずっと迷ってた。
カラフルでいい。カラフルで生きて下さい。』
生きるための目標を持てない少年だけでなく、
嘗て少年だった大人たちにも希望と勇気を与えてくれる内容ですが、
劇中で、現在荒川線のみとなった路面電車(東京都電)への懐かしい思いを、
原作にはないエピソードとして語っているのは、利便性だけを優先して
画一化されていく日本の、一色しか許さない社会に対する原監督の憂いが
込められているのではないでしょうか。

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