梶芽衣子見たさに、彼女の代表作『さそり』を観る。
伊藤 俊也監督が演出した3作は、
所々に斬新な映像が散りばめられていて魅せますが、
全体に作りが安っぽくて荒く、切口を間違えば、
ピンク映画になるエログロナンセンスな世界は、
メジャーで作られた映画とはとても思えず、
斜陽産業だった頃の、日本映画の現状が垣間見れます。
さそりは聾唖者なのではないかと思えるほど喋らず、
梶芽衣子が歌舞伎役者が見得を切るように、
その鋭い眼光で人を射り、大向こうを唸らせますが、
大島渚の『新宿泥棒日記』や若松孝二の『天使の恍惚』など
ATG系の映画に出演して注目されていた横山リエや
アングラ演劇界で活躍していた、早稲田小劇場の
白石加代子、状況劇場の李礼仙の共演者も魅力的で、
さそりの静に対して、動の役目を担って、
饒舌に悪女を演じています。
名曲「恨み節」をBGMに国家権力に刃向うさそりの姿は、
学生運動盛んな当時の若者にアピールするには、
十分なインパクトを持っていたことは間違いありません。
「女囚701号/さそり』横山リエ
「女囚さそり けもの部屋」李礼仙
憎い口惜しい 許せない
消すに消えない 忘れられない
尽きぬ つきぬ
尽きぬ女の 恨み節
作詞:伊藤俊也、作曲:菊池俊輔「怨み節」より
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